2013 Fiscal Year Research-status Report
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24520385
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
林 佳世子 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (30208615)
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Keywords | 碑文 / オスマン帝国 / トルコ |
Research Abstract |
本研究は、オスマン朝時代の文芸活動の中心にあった「詩人」と、彼らが書いた「碑文詩」のデータベースを構築し、オスマン詩をオスマン朝社会を理解するための史料として活用する試みである。イスラム文化圏には、建造年を読みこんだ詩を碑文に刻み、建物入口に掲げる伝統があるが、オスマン朝時代の碑文詩については、現在に至るまでその集成は十分に行われておらず、全容は明らかでない。 本研究は、碑文に刻まれた「詩」の仕組みを明らかにする「オスマン詩に関する基礎研究」と「オスマン碑文研究」の二つの柱からなる。これにより、オスマン詩の資料としての利用を可能にし、それを用いて、主要な建物の碑文詩の内容を分析し、建物と詩、建物の建設者(パトロン)と詩人の関係を、具体的に明らかにする。 具体的な達成目標は、第一の「オスマン碑文詩研究」においては、諸情報を整理した『オスマン朝期古典詩入門』の公刊である。2年間の研究により、順調に準備を進めている。第二の「オスマン碑文詩研究」では、Ottoman Inscription Database を構築し、広く利用に供すると同時に、それを用いた研究を推進する。Ottoman Inscription Databaseは、すでに一部を公開しており、引き続き、作業を継続する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の第2年目にあたる2013年度には、次の研究を進めた。まず、本研究の第1の目的である「オスマン詩に関する基礎的研究」については、引き続き、『オスマン朝期古典詩入門』の公刊にむけての作業をすすめた。本書は、第一部「オスマン古典詩の世界」、第二部「詩の技術」、第3部「詩人と作品」からなる。アーシュクチェレビ―の詩人伝からデータベース化した詩人データベースを活用し、本書の準備を継続している。翻訳を含め、作業は順調に進捗しており、平成26年度中に公刊の予定である。 本研究の第2の目的である「碑文詩研究」では、春にイスタンブル、夏期にギリシャ・ロドス島で調査を行い、多数の碑文詩のデータを収集することができた。調査地については、現地の研究者との連絡状況からロドス島での調査を先行して実施した。調査にあたってはUniversity of the Aegean(ギリシャ)のトルコ語トルコ文学研究者Hasan Kaili講師の協力をえた。調査した碑文詩情報の解析をすすめ、碑文データベースに蓄積している。2014年4月現在5398データが蓄積されており、データベースの形成は順調に進んでいる。 以上の理由により、平成25年度の研究活動を通じ、本研究は「(2)概ね順調に進展している」と判断する
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Strategy for Future Research Activity |
研究の最終年度にあたる2014年度には、第1の目的である「オスマン詩に関する基礎的研究」を完成させ、『オスマン朝期古典詩入門』を公刊する。 第二の目的である「碑文詩研究」では、引き続き、調査地点を増やし、オスマン碑文詩データベースの拡充につとめる。あわせて、その結果を分析した論考を発表する。
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Research Products
(1 results)