2013 Fiscal Year Research-status Report
碑文、絵画、画報資料を利用した祭祀芸能組織の研究及びその利用に関する方法論の確立
Project/Area Number |
24520389
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
櫻井 龍彦 名古屋大学, 国際開発研究科, 教授 (60170643)
|
Keywords | 国際情報交換 / 中国 |
Research Abstract |
本研究の対象は地域を大きく華北と華南に区分した場合、華北では主として北京、山東、東北を中心に分布する碧霞元君信仰とその廟会に参加する祭祀芸能組織であり、華南では福建に起源する媽祖信仰とその廟会に参加する祭祀芸能組織である。ただし華北では天津においては碧霞元君よりも、南方起源の天后(媽祖)信仰がみられるので、それは重要な研究対象になる。 本年度は媽祖信仰にかかわる調査に主として従事した。天津のような北方にこの媽祖信仰が分布しているのは、航海によって北上した商人たちが広めたからであるが、本年度は、その信仰の起源と発祥地の現在における祭祀状況を確認するため福建省を調査した。福州市、ほ田市、び州島、厦門などを訪れ、多くの碑文と写真資料が収集できたので、それらの整理、分析が進行中である。 天津おける調査は、天津市内の祥音法鼓老会と津南区葛沽鎮の西茶棚宝nian花会、香斗茶棚宝nian花会ほか、塘沽鎮の飛叉花会などで実施し、葛沽民間花会協会会長、葛沽鎮文化局局員らと面談できた。聞き取り資料の文字起こしは一部完成している。さらに天津大学Fengjicai文学芸術研究院には、天津皇会を調査している研究員がおり、双方の研究状況を報告し合い、情報収集できたことは今後の研究にとり有益であった。 現地における研究協力者の趙彦民氏は本年度16日間約130時間にわたる独自の調査と聞き取り資料の文字起こし作業、図書館等における資料収集と整理などにおいて協力してくれた。また二人は10月に天津大学で開催された「当代社会中的伝統生活」国際シンポジウムに参加し、研究成果を発表した。櫻井には関連する論文としてほかに「関於日本伝統村落的保護問題」を中国の雑誌『村落遺産』2013年2期に発表した。 画報類の資料は『大公報』と『北洋画報』から収集した。膨大な資料でありかつ索引もないので、引き続き努力していく。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の最終目的は(1)媽祖信仰と碧霞元君信仰に関する祭祀芸能組織の現地調査、(2)祭祀の歴史的な実態を碑文、絵画、画報などの文字、メディア資料を活用して考察すること、(3)文字、メディア資料を民俗志のなかでどのように活用できるのか、その方法論的な試みを提示すること、にある。 本年度は、このうち(1)については、福建省、天津市において調査ができ、計画通りに達成できた。残るは碧霞元君信仰と娘娘神信仰なので、それを最終年度には集中して調査したい。(2)については、『大公報』、『北洋画報』について調査が進行している。天津大学を訪問し、文学芸術学院が独自に所有する画報類について閲覧できたのも収穫であった。(3)については、最終年度の報告書のなかでまとめるつもりでいる。そのために必要な生の資料として碑文、画報類をさらに収集し、整理していく作業がまだ残っている。
|
Strategy for Future Research Activity |
1)研究2年目にあたる本年度は媽祖信仰を中心に調査をおこなったので、3年目の2014年度は、碧霞元君信仰を中心に調査をおこなう。そのために調査対象は①北京の妙峰山における廟会(4月から5月)と碑文、②碧霞元君信仰の発祥地である泰山と廟にある碑文、③華北から東北にかけて盛んな娘娘廟の調査、の3つを実施する。ただし②と③については、時間の制約からどちらか1つの選択になることもある。媽祖信仰に関しては天津葛沽鎮で1回、調査をする(4月)。葛沽鎮は再開発がはじまり、現在街そのものが姿をかえつつあるので、緊急調査を要する。 (2)画報、絵画、写真資料などについては、主として『大公報』、『北洋画報』、『北京画報』などを継続して調べる。碑刻文の民俗志における活用法については、さらに理論的な考察を深めたい。 新聞、雑誌などに小さく掲載された広告文や廟会案内を集めるのは相当な根気がいるが、その背景にある社会的、歴史的な問題は、ある意味では近代北京史、近代天津史への新しい視角をなるものと期待できる。 (3)媽祖と碧霞元君は中国民間信仰を代表する二大女神である。いま『世界女神大事典』(仮称)を編纂中であり、今年度中に出版される。筆者も媽祖、碧霞元君、娘娘神など中国道教、民間信仰の女神に関する執筆項目を担当している。これまでの研究成果を取り入れた内容で執筆する予定である。 (4)本年度は最終年度であるので、報告書を作成する。研究協力者の趙彦民氏とともに編集し、聞き取り資料の文字起こし、碑文、画報資料、論文などを内容とする。
|