2013 Fiscal Year Research-status Report
モンゴル時代を中心とする東西資料の外来語分析―中国歴代正史の精確な理解にむけて
Project/Area Number |
24520391
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
宮 紀子 京都大学, 人文科学研究所, 助教 (60335239)
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Keywords | モンゴル時代 / 大元ウルス / フレグ・ウルス / 『集史』 / 全真教 / 度量衡 / 銀錠 / 銅権 |
Research Abstract |
前年度にひきつづき、イスタンブルのスレイマニイェ図書館、トプカプ宮殿図書館、パリのフランス国立図書館から将来した大量の13-15世紀のペルシア語古写本、ウイグル語資料を、漢文資料、モンゴル語資料等と照合しながら、分析・訳注の作成作業をおこなった。その過程で、商業・交易を重視した大元ウルスとフレグ・ウルスの間において、度量衡、金銀貨幣の純度等の統一の機運がたかまり、『大元本草』の編纂や世界地図の製作と同様、1286年から1287年にかけての時期がポイントだったこと、明らかになった。また、『集史』の編纂にさいし、中国方面の情報提供者として重要な役割を果たしたボロト丞相が、政争に敗れての国外追放であったと同時に、大元ウルスの諸政策のノウハウをフレグ・ウルスに伝承する役割を期待され外交使節として派遣されたことも確認された。一例として、官製の銅権の製作の過程・規範が東西でまったく同じであったことが挙げられる。ちなみに中国各地で出土した官製の銅権に刻されたウイグル文字モンゴル語、ペルシア語はこれまで未解読であったが、一案を提示することができた。いっぽう、金末から1287年頃までの中国華北の学術の変遷を、医学・数学・天文学、卜筮などの分野から、漢籍、ペルシア語、モンゴル語資料、碑刻を用いてたどり、かれらがかなり早い段階からイスラーム科学と遭遇する機会を有していたこと、モンゴル諸王が実学に長けた有能な人材を争って獲得し、ケシクにいれようとしたこと、そこに立身出世の道が開かれていたこと、華北最大の道教教団、全真教はそうした人材を提供する集団とみなされていたこと、儒学や三皇廟に敷設された書院や医学・陰陽学の学校がモスクとマドラサの関係に影響を受けている可能性があること、ペルシア語、テュルク語資料等にみえる中国人の同定には、モンゴル諸王の「投下領」が重要な手がかりとなること、などを指摘した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
収集したペルシア語古写本の中国にかかわる記述の抽出・訳注作業、中国の歴代正史、典籍・文書・碑刻資料中の外来語分析はともに順調に進んでいる。いっぽう、世界各地の発掘報告や新出資料の紹介等の研究論文、ロシア語やラテン語資料の収集も可能な限り並行して進めており、訳注の充実に役立てている。
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Strategy for Future Research Activity |
ひきつづき東西文献の外来語の抽出作業およびラシードゥッディーンの『集史』『農書』『書記典範』等の中国関連の記述の訳注をおこない、同時に契丹時代の重要語彙の分析、ペルシア語・漢語等諸言語資料における「外来語」辞書の編纂にむけて準備を進める。
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Research Products
(4 results)