2014 Fiscal Year Research-status Report
琉球「通事書」写本群の本文校訂及び加点注釈の総合的研究
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24520394
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
木津 祐子 京都大学, 文学研究科, 教授 (90242990)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 琉球 / 写本 / 官話 / 話本小説 / 通事 |
Outline of Annual Research Achievements |
国内に分蔵される琉球通事編纂の官話学習書(通事書)の収集は、26年度、沖縄県立博物館蔵『白姓』の調査をもってほぼ終了した。現時点で、京都大学蔵本、東京大学蔵本、関西大学蔵本、法政大学蔵本、石垣市立八重山博物館蔵本、沖縄県立博物館蔵本の写本群の収集が完了し、本文及び注文の解読と電子データ化は、オフィスアシスタントの協力を得て、現在最終段階に至っている。 計画の骨子であったデータの翻刻・出版は、平成25年度の『琉球写本《人中画》四巻付《白姓》』(単著、臨川書店)による京都大学蔵本の翻刻・影印出版に続き、26年度には、関西大学図書館長澤文庫所蔵の写本について、関西大学内田慶市・奥村佳代子両教授との共著の形で、研究解題と索引を付して『関西大学長澤文庫蔵琉球官話課本集』(関西大学出版会)として公刊した。また、法政大学沖縄文化研究所に、書名未詳のまま所蔵されていた稿本(写本)について、内容を精査した結果、『官話簡要揀選六條』と名付けるべきことを解明し、論文「琉球稿本『官音簡要揀選六條』について」を発表した。これは、編集委員として刊行事業に加わった『高田時雄教授退職記念東方学研究論集』(臨川書店)に掲載され、26年6月に刊行済みである。 さらに、琉球と同様の「通事書」を独自に有する長崎唐通事の著作(写本)を題材に、26年に『訓読から見直す東アジア』(共著、中村春作編、東京大学出版会)を上梓した。この長崎唐通事の写本については、琉球の通事書以上に中国白話小説の影響が色濃いのが特徴であるが、その問題の所在に関して、「長崎の外から見る唐通事資料--本文の外から見る周辺資料」と題して、関西大学において研究発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
26年度の事業内容としては、収集した資料を整理の上でデータ入力し、写本データを翻刻公開するのが主な課題であった。完了済みの資料については、年度末に関西大学出版会より翻刻出版を行ったが、当該資料が18~19世紀に成立した写本である為に、仮名書きや草書体、さらに訓点や琉球語表記も含まれる注文を、綿密に解読することに予想外の時間がかかった。その為、収集資料の一部のデータ入力が、未完了の状態である。26年度末に一年の期間延長を申請し承認を受けることができたため、27年度も引き続き、写本群のデータ化を推進する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
27年度は、集中的に収集写本の電子データ入力を推進する。同時に、加点注記の分析作業も引き続き進めていく予定である。琉球と同様の「通事書」を多く残す長崎の写本群との比較を通して、両者の違いが、中国話本小説(白話文体)の需要の仕方に端的に表れていることが明らかとなったので、その意味を問い直すことにより、本研究成果を中国文学研究へフィードバックすることを今後は図っていきたい。
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Causes of Carryover |
資料の解読と校訂をすませ、電子データ化する作業が年度内に完了せず、27年度も引き続き作業を継続する必要が生じたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
残る未入力資料を、オフィスアシスタントの協力を得て整理し、翻刻データを完成させる予定である。その為の謝金が、延長期間の主な使途内容となる。
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