2012 Fiscal Year Research-status Report
ビルマ文学史における1940年代の研究~日本占領期文学から戦後文学へ~
Project/Area Number |
24520395
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
南田 みどり 大阪大学, 言語文化研究科(研究院), 教授 (80116144)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ビルマ文学史(現ミャンマー連邦) / 日本占領期 / テインペーミン / 内戦 / 抗日統一戦線 / 文学の階級性 |
Research Abstract |
本研究は、ビルマ本国で研究の蓄積が十分でない日本占領期(1042-45)のビルマ文学を戦後文学の諸相から照射することによって、1940年代文学をとらえなおし、ビルマ文学史研究における1940年代の役割を検証することを主要な目的とした。研究代表者は、平成21年度-23年度科学研究補助金による日本占領期文学研究の成果に基づき、同研究期間に収集できなかった資料の収集と聞き取りの継続、戦後に出版された回顧録等による日本占領期文学像の補完、1945年8月から1949年に出版された長編小説の収集分析により、占領期小説の戦後小説への継承を検証し、日本人の形象化の変遷をも確認したうえで、40年代末の文学の階級性をめぐる論争と40年代文学との影響関係を考察することを目指した。ビルマへの2回の現地調査と資料収集、国立国会図書館における資料閲覧等を経て、以下のような成果を得た。 第一に、「ビルマ報告」において文学の現状を述べる中で、40年代文学の位置づけに言及し、第二に、論文「文学に見るビルマのデルタ農民」において、40年代後半のビルマ共産党と抗日統一戦線の不和から戦線の崩壊、内戦へと至る過程を背景としたテインペーミンの2作品の意義について、同時代の他作品との比較も含めて論じることができた。第三に、テインペーミンの長編『開けゆく道』(1949)の背景であるデルタ地帯を調査するとともに、関係者への聞き取りによって、同作品の全訳ならびに訳注と解説を完成することができた。さらに、現代ビルマ気鋭の詩人の詩集において序文を求められ、権力と詩人のせめぎあいに関する序文を執筆し、掲載された。 その他、口頭による報告においても、40年代文学の意義に言及することが可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2回の現地調査、資料収集、ならびに国内における資料の閲覧等によって、必要な資料の収集ならびに事実確認が進展したため、おおむね順調に上記の研究の目的が達成されていると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
収集済みの資料を整理し、現地における更なる資料収集と聞き取り調査の準備を進め、それらを実施する。収集した資料と聞き取り調査の結果を整理し、中間まとめとして学術誌に論説を執筆する。ビルマ近現代文学史上の40年文学の位置づけを確認するため、現代文学にも目配りを行う必要から、『21世紀ミャンマー・アンソロジー』(仮題)の編訳に向けて、作品収集を行い、2012年8月に廃止された事前検閲の影響をも含めて、作家への聞き取りも進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
雨季の8月ならびに乾季の2月に、現地において資料収集ならびに聞き取り調査を実施することに使用する。
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Research Products
(4 results)