2012 Fiscal Year Research-status Report
白居易を中心とする中唐「風流」文学の展開に関する研究
Project/Area Number |
24520399
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
諸田 龍美 愛媛大学, 法文学部, 准教授 (20304701)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 白居易 |
Research Abstract |
長篇詩「琵琶行」は、「長恨歌」と並ぶ白居易の代表作であり、国文学に与えた影響も大きい。しかし、「長恨歌」と比べた場合、国内での研究状況は質・量ともに立ち後れており、研究の大きな進展が望まれていた。 こうした状況を踏まえ、研究代表者は、当該年度『白居易研究年報』第十三号(二〇一二年・勉誠出版)の編集主任担当者として「琵琶行」の特集号を企画した。その結果、中国・台湾など海外の研究者からも寄稿を得て、総計17本の「琵琶行」研究論文を掲載することができた。中国文学研究者ばかりでなく、国文学研究者からも多くの論考が寄せられた。この「琵琶行」特集号の刊行によって、日本における「琵琶行」研究を大きく進展させ得たと考えている。 また、研究代表者は、同『年報』に自ら以下の文章を執筆し掲載した。①「特集にあって」、②論文:「「琵琶行」の存在論―〈漂泊の慨嘆〉から〈故郷の探求〉へ―」、③訳注:陳才智原著「中国『琵琶行』研究総覧・附「『琵琶行』研究論著目録」。④「編集後記」。 このうち②の論文「「琵琶行」の存在論」は、「琵琶行」を単独の作品ではなく、同時期にさかんに詠じられた閑適詩との対比において論じたものであり、「琵琶行」と「閑適詩」との本質的な連関を、「漂泊からの帰郷」として把握すべきであることを明らかにした。これは従来の主題論を格段に深めた画期的な論考であり、「琵琶行」研究史における、その意義と重要性はきわめて大きいものと考えている。 上記のほかに、翻訳として「白居易「弟を祭る文」訳注」(『愛媛大学法文学部論集第34号)を発表した。また、「閑適詩」研究の成果として、論文「白楽天のアタラクシア―〈自己に由るもの〉と〈由らぬもの〉との峻別―」の『新しい漢字漢文教育』(全国漢文教育学会・第56号・2013年)への掲載が決定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
「研究の目的」に記した①「従来不十分であった作品の主題を論証し、併せて後世文学への影響について解明する」という目的は、当初の計画にはなかった『白居易研究年報』(勉誠出版)における企画:「琵琶行特集号」の実現・刊行によって、計画以上に進展させることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究によって、「琵琶行」と「閑適詩」とは、「漂泊の慨嘆」と「身心の安適」という、表面的にはまったく相違するテーマを歌いつつも、実は「漂泊からの帰郷」という、表裏一体の心理から生まれた作品であることが判明した。 上記の認識をふまえ、今後の研究は以下のように推進してゆく。 1、白居易「琵琶行」と元シン「琵琶歌」との比較研究。 2、下ケイ退居から江州左遷にいたる期間における、白居易の「閑適への志向」を、その決意性という観点から究明する。 3、「琵琶行」に代表される「漂泊の文学」と、「閑適詩」に代表される「帰郷の文学」との関連性について、さらに究明する。 4、「琵琶行」と関連の深い土地(西安市、九江市、渭南市など)を訪れ、現地調査を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1、「琵琶行」と関連の深い西安市、渭南市(下ケイ)、九江市を訪れ、現地調査を行う。 〔旅費〕 2、白居易文学および日中比較文学関連の書籍の購入 〔物品費〕
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