2013 Fiscal Year Research-status Report
白居易を中心とする中唐「風流」文学の展開に関する研究
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24520399
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
諸田 龍美 愛媛大学, 法文学部, 教授 (20304701)
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Keywords | 白居易 / 閑適詩 |
Research Abstract |
白居易の閑適詩が、「詩の四分類」の一つとして確立されたのは、江州左遷の際であり、同期に製作された「琵琶行」と、表裏一体の作品群であることは、すでに24年度の「「琵琶行」の存在論―〈漂泊の慨嘆〉から〈故郷の探求〉へ―」において解明した。 平成25年度は、こうした成果を踏まえ、①「白楽天のアタラクシア―〈自己に由るもの〉と〈由らぬもの〉との峻別―」『新しい漢字漢文教育』(全国漢文教育学会・第56号・二〇一三年)及び②「閑適への決意―下ケイにおける心理的基盤の形成―」『白居易研究年報』(二〇一三年・勉誠出版)を発表した。 白居易の閑適詩に関しては、従来主に、白居易の〈適を求める本性〉に着目して研究が行われてきており、白居易の閑適詩は、孟子のいう独善(孤独における自己修養)を、〈個人的な愉楽の追求〉へと〈ずらしたもの〉として、考えられてきた。 しかし、論文①においては、閑適詩は決して、単なる〈快適さの感覚的追求〉なのではなく、〈自己に由るもの〉と〈由らぬもの〉との峻別という、ギリシャ思想のいう〈アタラクシア/心の平静〉の考えにも通ずる、〈意志的かつ思想的な基盤を持つ処世態度〉であることを明らかにした。 さらに論文②では、江州左遷の直前にあたる、下ケイ退居期の作品を詳密に分析することによって、白居易の〈直を貫く本性〉を新たに指摘し、閑適詩及び白居易の人格は、その〈適を求める本性〉と〈直を求める本性〉との統合、すなわち〈自らの情性を守り完遂する決意/閑適への決意〉によって、形成されたものであることを明らかにした。さらに、白居易の閑適詩と諷諭詩は、本来別物ではなく、何れも〈白居易の情性の核心に存在する良心〉を源泉とするものであって、その意味において〈孟子の独善(性善説)〉を継承しており、それを〈個人の愉楽へと「ずらした」〉という通説は、修正されるべきであることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は「琵琶行」と表裏一体の関係にある〈閑適詩の本質〉について、2篇の学術論文により、詳密に分析することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究によって、白居易文学の根底には、〈自己の本来性への帰郷〉という、きわめて重要な特質が潜在していることを明らかにすることができた。 上記の認識をふまえ、今後の研究は以下のように推進してゆく。 1、白居易と陶淵明との比較研究。両者の本質を〈帰郷の詩人〉として捉え、白居易に与えた陶淵明文学の影響について、その本質的な要素を明らかにする。 2、「琵琶行」や「閑適詩」と関係の深い土地(中国九江市など)を訪れ、現地調査を行う。 3、台湾で行われる国際学会などに参加し、研究課題に関する資料収集や情報交換を行う。
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Research Products
(2 results)