2013 Fiscal Year Annual Research Report
近世の東アジアにおける『孔子聖蹟図』の出版と伝播に関する研究
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24520401
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
竹村 則行 九州大学, 人文科学研究科(研究院), 教授 (60117158)
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Keywords | 孔子 / 聖蹟図 / 明清中国 / 李氏朝鮮 / 江戸日本 / 狩野探幽 / 林羅山 / 孔子聖蹟図和版集成 |
Research Abstract |
本研究の目的は、近世東アジア(明清中国-李氏朝鮮-江戸日本)において大流行した「孔子聖蹟図」の実態について広く調査し、その出版と伝播を解明することであった。当初は第3年度に研究成果を刊行する計画であったが、当該年度における」申請者の早期退職のために、第2年度における研究成果の総括が迫られた。にも関わらず、幸いに資料の豊富な蓄積と関係者の熱心な協力に恵まれ、滞りなく研究成果を刊行することができた。 本研究の主要成果として以下の4点が挙げられる。 1.鹿児島県南さつま市加世田や佐賀県多久市に珍蔵する「孔子聖蹟図」を、関係者の協力を得て撮影し、公刊することができた。このことから、江戸初期九州地区における儒教教育の先進性が明らかになった。 2.中国北京大学図書館所蔵の「聖蹟図」を調査し、貴重な版本を発見した。当初予定には無かったが、この機会に同大中文系において光栄にも口頭及び論文発表の機会が与えられ、有益な学術交流ができた。 3.韓国ソウル市の調査において、中央博物館、及び成均館大学校等所蔵の「孔子聖蹟図」について調査し、孔子像の朝鮮化を実見することができた。時間の関係で調査が及ばなかった資料については後日の調査を期したい。 4.日本の資料調査では、上記の2点のほかに、狩野探幽や林羅山の「聖蹟図」を含む計9点の「聖蹟図」について写真を撮影し、「孔子聖蹟図和版集成」として1冊に纏めることができた。まだまだ調査漏れが多いが、今後の孔子、「聖蹟図」研究には有用である。 儒教の開祖である孔子に関する先行研究は中国-日本-朝鮮を含めて数多いが、対象を「聖蹟図」に限れば別の切り口が見えてくる。それは近世に発達した印刷技術によって出版され、普遍化しつつあった儒教教育のテキストとしてのそれである。本研究はまだ不十分だが、今後の「孔子聖蹟図」研究において有益な原資料を多く含むことは間違いない。
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