2013 Fiscal Year Research-status Report
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24520403
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
谷口 幸代 お茶の水女子大学, 大学院人間文化創成科学研究科, 准教授 (50326162)
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Keywords | 日本文学 / ドイツ文学 / 越境文学 / 演劇 |
Research Abstract |
当該年度に開催された多和田葉子の文学を原作とした公演に関する調査を継続した。具体的には「動物たちのバベル」と「夕陽の昇るとき~Still FUKUSHIMA」に関する調査を実施した。前者はイスラエルの演出家のモニ・ヨセフが提唱する国際バベル・プロジェクトにアジア公演に位置づけられ、8月に東京のシアター・カイで上演された。後者は、「ドイツ同時代演劇リーディング・シリーズ」の一環として多和田作品を継続して演劇化している劇団らせん館が芦屋市の谷崎潤一郎記念館で上演された。いずれも公演終了後は、多和田本人と演出家や出演者と観客が意見を交換する場が設けられ、そちらにも参加した。いわゆる演劇としての「動物たちのバベル」と朗読劇としての「夕陽の昇るとき~Still FUKUSHIMA」の形態を比較検証するとともに、「さくらのそのにっぽん」から一貫する震災・原発をモチーフとした戯曲とその演劇化を考えるための材料、並びに知見を得た。 また、多和田葉子本人の朗読会やパフォーマンスに関しても実地調査を継続した。デュッセルドルフでは、「Poesie-Ein Fest im Heine Haus」の一環として行われた多和田と高瀬アキとのパフォーマンスを調査した。パフォーマンスの内容にとどまらず、ハイネハウスに関する多和田のエッセイ等を裏付けにしながら、ドイツの文化政策を背景とした場とパフォーマンスとの関係性について考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前年度に引き続き日独両国において開催された、多和田文学を原作とした演劇と多和田本人のパフォーマンスの実地調査を進め、年譜や小考察を成果の中間報告として公開することができたが、ハンブルクの朗読会が主催者側の事情により延期となったため、予定していた調査を進めることができなかった。また継続調査を予定していた「旅をする裸の眼」の朗読劇形式のドイツでの上演は学事日程の関係で実施できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
2014年度は「夕陽の昇るとき~Still FUKUSHIMA」のドイツ公演が予定されているが、勤務先の学事日程の関係で現地調査が困難であるため終了後のインタビューになるが、夏季休暇時を活用して渡独して、演出家と俳優にインタビューを試みる予定である。 お茶の水女子大学比較日本学研究教育センターが主催する国際日本学シンポジウムを「越境する文学の諸相~ことばを越える・ジャンルを越える~」というテーマのもとコーディネートするとともに、多和田葉子の事例について報告する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
「旅をする裸の眼」の朗読劇上演について継続調査を予定していたが、勤務先を異動したことに伴い、異動先の学事日程の関係で実施が困難になり見送った。それにより使用金額の使用に変更が生じた。 次年度は変更に伴う補助も含めて、日本、ドイツでの調査を継続するとともに、課題となっていた日本・ドイツ以外の国や地域での公演に関する調査を実施したい。具体的にはスロベニアでの劇団らせん館の公演を候補としている。
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