2012 Fiscal Year Research-status Report
中国知識人の挫折と信念ーー蕭乾文学と思想の軌跡をめぐって
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24520404
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hirosaki Gakuin University |
Principal Investigator |
顧 偉良 弘前学院大学, 文学部, 教授 (50234654)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 中国の作家蕭乾 |
Research Abstract |
二〇一二年十月、弘前学院大学で「現代中国作家の挫折と信念――蕭乾文学とその時代」を(2012年10月12日)と題する国際学術シンポジウムを行った。その際、蕭乾(しょうけん)夫人文潔若氏を迎え、「蕭乾文学とその時代」と題する講演を行ってもらった。この講演では、1930年代から始まった蕭乾の文学創作及び建国後の政治運動に遭遇した蕭乾の思想状況に触れている。 その他に、論稿「『地図を持たない旅人』――蕭乾と中国作家の運命」(『弘前学院大学文学部紀要第49号』、pp.15-30、2013年3月)を発表した。本論稿は、〈一〉「生産者としての〈作者〉」、〈二〉「建国前夜の文学論争」、〈三〉「祖国へ――作家蕭乾の選択」、〈四〉「中国の〈オデッセイ〉――『地図を持たない旅人』」、〈五〉「蕭乾の批評精神」と五章に分かれている。毛沢東時代における文学状況をめぐって、ソビエトの文学状況及び建国前夜に香港で起きた文芸論争を踏まえながら、翻弄された蕭乾の人生と文学を考察した。 蕭乾の思想の根柢には、民主主義に基づき個人の権利を尊重する思想が流れているが、それが政府当局のイデオロギーとは相容れないものである。そのため、中国国内での蕭乾研究は、進まぬ状況にある。一人の男の波乱万丈の人生を描いた『地図を持たない旅人』は、海外では「中国の〈オデッセイ〉」と譬えられている。作品の記述が内包しているダイナミックな構造は、これまでの中国の文学よりほかにない複雑さで、新たな文学の変容を孕んでいる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
論稿「『地図を持たない旅人』――蕭乾と中国作家の運命」(『弘前学院大学文学部紀要第49号』、pp.15-30、2013年3月)の中で、毛沢東時代における文学状況をめぐって、ソビエトの文学状況及び建国前夜に香港で起きた文芸論争を踏まえながら、翻弄された蕭乾の人生と文学を考察した。シンポジウムの開催準備などにより、建国初期における革命状況及び文藝創作との影響関係について考察しなかった。次年度において研究調査を含め、五十年代初期における蕭乾の創作状況を考察する予定。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年、弘前学院大学で国際学術シンポジウム「現代中国作家の挫折と信念――蕭乾文学とその時代」を(2012年10月12日)を行った際、講演のために来日した蕭乾夫人文潔若氏より、1950年に蕭乾自身の書いた思想改造の資料(「自伝」、蕭乾著)を手渡された。思想改造のために強制的に書かせられたこの「自伝」は、毛沢東により発動した知識人に対する思想弾圧のキャンペンを考える上で第一級の資料である。また蕭乾の文学思想を理解する上でも重要性を持っている。来年の刊行に向けて目下、翻訳を進めている最中である。この予想外の資料を踏まえ、建国直後における蕭乾の思想改造及び創作状況について考察する予定。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
「該当なし」
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Research Products
(6 results)