2014 Fiscal Year Research-status Report
近代日本に於けるインド学仏教学の成立と展開―その書誌学的、文献学的研究―
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24520406
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Research Institution | Komazawa University |
Principal Investigator |
金沢 篤 駒澤大学, 仏教学部, 教授 (20286686)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 書誌学 / 近代日本 / インド学 / 仏教学 / 比較思想 / 東西文明 / 比較文学 / サンスクリット |
Outline of Annual Research Achievements |
明治以降、おびただしい数量の書物が刊行され、多くの日本人を啓発啓蒙したことが想像される。書物は散逸しその大半は失われ埋もれてしまっている。誤解と誤記も山積みである。近代日本に於けるインド学仏教学の成立と展開の様を、膨大な文献の山の中に直に参入して俯瞰する。そしてその流れを文献的に明確に裏付けるべく企図されたのが本研究である。 最終年度に当たる本年は、きめ細やかな資料収集と解読を継続し、その解析・綜合をさらに一段と意欲的に展開させ、欠落していた留学情報の一端を海外出張による現地調査などにより補填し、書誌学的・文献学的な成果を系統的に取り込んだ、総括的な論文をまとめる予定であったが、予想外の公務繁忙により、十分にそれを達成出来なかった。不充分な点を研究期間を延長しての次年度に持ち越すことになった。 本年は初年度、次年度有る同様に、資料収集と解読に基づく、近代日本におけるインド学・仏教学の成立と展開に関わる、個別的な調査と分析の成果を何点か論文という形で公表したが、方法論上の新たな試みとして、有用なものである「翻訳と引用」の観点の導入を具体的に成果としてまとめることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の中心は、文献資料の収集と整理・解読を根底に持つ。文献の収集と解読・解析の蓄積は順調に進んでいる。近代日本人の学問の成立に大きな要因となった、留学経験と海外での勉学・研究の実情の現地への出張による実地調査とそれらを取り込んでの総括的な論攷の模索を次年度に持ち越すことになったが、各種メディアや情報の宝庫たるインターネットの方法的なぶれのない活用を通じて、信頼に値する貴重な知見を蓄積することができた。 膨大な資料をどのようにして組織的に活用して、成果を出すかという方法的な模索も初年度以降の一つの大きな課題であったが、縦割りの総花的な作業では、時代を動かした個々の人間のエネルギッシュな軌跡は捉えきれないと考え、歴史の大いなる流れの中の一点に狙いを定め、それに執拗に纏い付く方法こそ、真の歴史的な流れの再構築に不可欠であるとの展望に立っての作業であったが、「翻訳と引用」という新たな視点の導入の上、いくつかの事例に則して成果をまとめることを通して、その方法の妥当性も具体的に確認できたように思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究期間を一年延長しての最終年度になる平成27年度は、出張しての個別のきめ細かな実地調査を実現して、本年新たに取り込めた「翻訳と引用」という新たな視点をフルに活用した上で、書誌学的・文献学的にも充実した成果を論文と総括的な報告書としてまとめるつもりである。
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Causes of Carryover |
国内外各大学の実地調査、出張の為の時間が思うようにとれなかったことが第一の理由である。また、パソコンシステムを更新した結果、それを用いてのデータ処理に手間取っていることも関係するが、近代日本に於ける一般市民へのインド思想、仏教の流布浸透状況と仏教学に携わる内外者の具体的な振る舞いを総合的に知る資料(各種仏教講習会や大学での仏教に関わる研究・教育・研究者の実情を知る情報と文献)が、当初予定していたようには収集出来ていない。したがって、各々のトピックに関わる細部のデータは蓄積されても、それを綜合して全体の流れを総合的に論及する作業が思うように捗らなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の早い時期に、データ収集・処理のための身辺の環境をいっそう整備すると共に、欧州などへの早期の出張を果たし、きめ細かな文献の収集と解析、実地調査を鋭意遂行することに努め、これまでに蓄積された細部にわたる知見をさらに総合的にまとめ上げ、それを研究発表や論文やインターネット公開や冊子化することなどに当てたい。
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