2013 Fiscal Year Research-status Report
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24520411
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
西 成彦 立命館大学, 先端総合学術研究科, 教授 (40172621)
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Keywords | 比較文学 / 植民地文学 / ディアスポラ / ポストコロニアル / バイリンガリズム |
Research Abstract |
平成24年度に着手した本研究は、日本語文学に関しては、1)従来の「外地」概念の拡張、 2)敗戦=帝国崩壊後の日本語文学の変容、また比較植民地文学研究の観点からは、3)英語圏・フランス語圏・ドイツ語圏との比較を重点的に行うものであるが、1)2)については、平成25年度の日本台湾学会での基調報告「脱植民地化の文学と言語戦争」、植民地文化学会でのパネルトーク「在日文学と言語戦争」などで、台湾研究者並びに日本植民地の文学研究者との幅広い交流機会を得たほか、「外地の日本語文学」に関する研究にあたっては先駆的な役割を果たされた幾人かから1980年代・1990年代の研究状況に関して、有益な情報提供をいただいた。またその研究成果は、学会発表×1(日本比較文学会)、雑誌論文×2、共著への論文掲載×1という形で発信できた。越境(地域横断)的な文学を考察するときに、多重言語使用の問題が極めて重要で、文学作品の一言語ベースという形式に惑わされないテキスト研究の方法は、ほぼ確立でき、これは従来、東欧系・ユダヤ系文学を考察する中で磨き上げてきた方法で、それが日本語文学研究の方法論としても有効であることが確かめられた。 次に、3)比較植民地文学の観点であるが、今年度は政治的な自立・独立後も旧宗主国の言語が文学活動の中核をなしている事例として、アフリカ文学の現状を調査すべく、英語圏南アフリカとポルトガル語圏モザンビークへの出張を行い、かねがね研究してきた南北アメリカ大陸と並んで、日常生活における多言語使用と文学における使用言語のズレに関して、植民地主義の遺産(功罪)を見定める今後の研究方法を練る上で有益な調査を遂行できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
比較植民地文学研究として、フランス語圏、英語圏だけでなく、ポルトガル語圏まで含めた植民地文学の研究と、日本語圏文学の研究を並行して進めながら、「多言語使用」を焦点化する方法に磨きをかけられた。またドイツ語圏(とくに東欧)に関しては、学外研究期間となった平成26年度前半、ポーランドで集中的に調査し、考究を深める予定である。 また将来的に「南北アメリカ文学史」、あるいは「アフリカ文学史」という語圏を越えた大きなくくりでの研究ネットワーク構築も視野に入れられる手前まで漕ぎ着けられたことは大きな収穫である。 他方、戦前・戦中・戦後の「日本語圏文学」に関しては、世界的な動向を視野に入れながらも「バイリンガリズム」を主眼に据えた論考を次々に発表でき、次年度に単行本として刊行できる目処が立った。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は最終年度であり、また本務校での学外研究期間に相当するため、年度前期には約50日、ポーランド(ドイツ・チェコを含む)で、また年度後期には約50日、ブラジルで調査を行い、ドイツ語圏およびポルトガル語圏の文学を「比較文学」的に考察する最終的なツメの作業を行う予定である。 また日本滞在期間中には、単行書「バイリンガルな夢と憂鬱」(仮題)の完成に向けて加筆・点検作業を行うほか、「世界文学・語圏横断ネットワーク」と称する研究者ネットワークを構築して、各国語文学研究者の交流促進を狙う予定である。そこでも本研究の成果は発信可能である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
南部アフリカ出張に際して、マプト‐ヨハネスブルグ間の移動をバス移動に切り替えるなど予定していた旅費が安上がりについたのと、購入予定図書の一部が京都市内の図書館で調達できたため。 ポーランドからドイツおよびチェコ、ブラジルからアンゴラ(すべて予定)への渡航費に一部を充て、その他は書籍の購入などに充てる予定である。
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Research Products
(8 results)