2012 Fiscal Year Research-status Report
自然談話文法構築のための、談話標識の機能に関する実証的研究
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24520415
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
甲田 直美 東北大学, 文学研究科, 准教授 (40303763)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 自然談話 / 談話標識 / 接続詞 / 接続助詞 / 語り / TRP / ターン / 会話 |
Research Abstract |
平成24年度は、自然談話の文法構築のための基盤として、自然談話資料の収集、転写作業と、その分析を行った。自然談話の中でも、接続詞と接続助詞が、会話の構造、会話の開始と終結において、どのような役割を担っているか、会話の構造と接続表現との関わりについて考察した。 本研究は、会話中で接続助詞が、文法形式としては中途終了形式であるにもかかわらず、実質的ターン交替が生じている事例について、TRPを決定する手がかりとして、言語形式、意味、音調といった要素を個々の事例に即して検討した。文法的に完結しない形式による語りの終結を観察することにより、節連鎖構造の詳細な記述、とくに、終結部付近の観察を行った。節連鎖構造の終結は終止形またはほかの言い切りの形が典型的とされてきた(岩崎・大野2005)が、語りの終結部の半数以上を中途終了形式が占めることを示した。 また、語りの終了部における「っていう」「みたいな」について、言わば中途終了の形式であるにもかかわらず、談話における内容の完結性に寄与するという現象を検討した。このような名詞修飾節構造を基底に持ち、先行文脈をさかのぼって修飾するという接続の仕方が「語り」における結末感を支えることを述べ、節連鎖による一定の長さの「語り」の終了の仕方を記述した。「っていう」「みたいな」による語りの終結は、語り手が臨場性を持たせた話の盛り上がりを見せることによって受け手の反応の呼び水となっていた。本研究による、名詞修飾節を形成する接続形式が後続要素を伴わずに接続形式のみによって終結する現象、未完了形式による完了の機能について、ターン交替への寄与や文脈機能について考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
自然談話の構造である、発話の重複や、切れ目のない接続(latching)やポーズ、沈黙等の発話間の時間的位置関係、抑揚や引き延ばし、中断、強弱といった現象の中で、本研究が焦点を当てる語類、すなわち、談話の構造表示や理解状態を表す談話標識がどのような機能をもっているのか、自然談話の言語特徴の整理・検討を行うことを目的としている。そのために、発話交替を含む自由対話を含んだコーパスを作成する。すでに13時間分の会話音声とその精密な転写(Jefferson, 2004による転写システム)は終えており、平成24年度の段階で8時間分のデータを得た。当初計画していた会話は40時間であるので、これまでに収集した21時間は、全体のおよそ50パーセントとなる。分析については、公表した論文以外に、分析を終えているのもあるので、次年度の早い内に論文化する。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度で得られた自然談話の言語指標とその考察をもとに、談話標識の分析を引き続き進める。 平成25年度で特に焦点を当てる談話標識は、接続助詞と接続詞、間投詞を予定している。平成25年度についても、前年度と同様に、自然談話データの採取は継続して行う。本計画の2年次終了段階において、自然談話データ計39時間分をとりまとめ、最終年度の平成26年度に一般公開する予定である。平成26年度には、研究の総括として、これまで積み重ねた談話標識の機能について全体像を得るとともに、自然談話資料について、話し言葉から書き言葉への移行を言語指標として取り出し、全体の中でどのような次元で描かれるのか、具体的言語指標と全体像との関連を示す。ジャンルと使用域による違いと、自然談話に特徴的に見られる言語特徴を明らかにしていきたい。さらに、会話データを収集する際の指針や、コーパス設計のデザインについても考察を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度では、自然談話データの収集と精密な転記、データ全体の整備を行う。データの整備に加え、考察対象である談話標識に関係する言語現象(言いさし、言い淀み、オーバーラップ、言い誤り、倒置等)について、話し言葉における機能の解明を行う。自然談話データの収集と転記整備のための人件費のための謝金を予定している。平成24年度では、談話データ収集の装置としてマイクや会話ビデオ収録のためのビデオのリモートコントローラー、多人数会話収録の装置も整え、実際に多人数会話を収録することが出来た。次年度では、これらの会話データの整備とともに、別の設定で新たにデータを収録したいと考えている。
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