2013 Fiscal Year Research-status Report
自然談話文法構築のための、談話標識の機能に関する実証的研究
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24520415
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
甲田 直美 東北大学, 文学研究科, 准教授 (40303763)
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Keywords | 自然談話 / 談話標識 / 接続詞 / 接続助詞 / 語り / TRP / ターン / 会話 |
Research Abstract |
平成25年度は、24年度に引き続き、自然談話の文法構築のための基盤として、自然談話資料の収集、転写作業と、その分析を行った。自然談話の中でも、接続詞と接続助詞が、会話の構造(話の重複、語りの継続と終結、フロア概念(話者が持つ会話の主導権)など)において、どのような役割を担っているか、会話の構造と接続表現との関わりについて考察した。日本語の節連鎖では、述語動詞によって明瞭に区切られずに、節を複数回続けながら、複合ターンを組み立てることができる。節連鎖における接続表現の機能を手がかりに、語りにおける会話の構造を扱った。語り部分においては、もっぱら一人の語り手が語り、他の会話参加者は聞き手にまわる。その間、聞き手はうなづきや受領の合図を送るのみで、発話ターンを取得しようとするような行動は見られない(Stivers, 2008等)のだが、「ある時点」を過ぎた時、実質的発話を開始する。語りの終結部は通常の順番取りシステムが再開される時点であり、認識可能な形で終結が示唆されていると考えられる。語りの終結部における接続表現の機能を扱った。また、これまでの考察から円滑なターン交替に資する要素として、言語の持つ形式、意味、音声、使用文脈がどのように働いているか総合的に検討した。語りの終結部について、終結に関与するのは文法的特性(終止形)、語り内での意味、音調、文脈情報の4者であるが、これらが全て揃って終結している例は限られており、これら相互の関連が問題となる。この際、手がかりとなるのは文法形式としては中途終了形式であるにもかかわらず、語りの終結部に位置し、なおかつ実質的ターン交替が生じている事例である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2011年度、2012年度、2013年度で整備した会話データは2889分(48時間)となった。相互作用のある自然会話データとしては一定量を満たしており、貴重な資料である。このデータ中、確認と整備が十分でないデータがあり、この点は最終年度である平成26年度中の早い時期に行う必要がある。データ内の固有名詞等のマスキングはほぼ終了し、公開へ向けた準備を進めている。研究の公表のペースについては、単行論文と国際学会、国内の全国学会での発表を行うことが出来た点で良かった。
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Strategy for Future Research Activity |
談話標識の機能として、語りの終結に貢献する機能を、言語の他の特徴の中で大きく位置づける。語りにおける節連鎖を構成する中途節と終結部の節における音響特徴を記述する。語りの終結部は通常の順番取りシステムが再開される時点であり、認識可能な形で終結が示唆されていると考えられる。再開に資する要素として、言語の持つ形式、意味、音声、使用文脈のうち、音声情報の特徴記述及び要素間の関連を考察する。中途終了形式を含む節連鎖における話速、強さ、高さ(ピッチ)、母音引き延ばし(長さ)を含む音声特徴をpraatにより分析する。節連鎖における接続表現の音響特徴を詳細に記述する。例えば、複数の接続助詞を含む例で、語り後半に二つの~テ形を含むが、語りの終結部においては節の後のポーズ(0.65秒)、音調が有効な要素となっている例がある。この場合、特に手がかりとなるのは終助詞等の明示的終了形式を含まない場合の音声特徴である。他の終了要素を持たないものでは、データ内では終結部における節の冒頭でのピッチ切り替え、話速の低下が顕著に観測された。今年度は、広く事例を集めて分析する必要がある。
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Research Products
(5 results)