2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24520419
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
田端 敏幸 千葉大学, 言語教育センター, 教授 (00135237)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | Phonology / Optimality Theory / Syllable / Accent |
Research Abstract |
本年度は、今後の研究の方向性を明確にするための基礎研究をおこない、研究発表会でその成果を確認した。借用語の処理システムとしては従来、外来語と漢語を別々に考えるのが一般的な方法であったが、申請者は両者の間に同じシステムが使用されているという見通しをもっている。年度末に東京大学駒場キャンパスで開催された東京音韻論研究会(TCP)3月例会ではそのような趣旨の議論を展開した。そこでは、漢字音のもつ造語力(2つの要素を組み合わせて語形成をおこなう)とそれに伴う音韻制約(2文字の漢字は最大の長さが4モーラである)が組み合わされた結果、漢語の複合語アクセントに興味深い現象が観察されるということを示した。具体的に言えば、一般には {A}+{B} のような二つの形態からなる複合語名詞のアクセントは、後部要素が長すぎたり、短すぎない場合には、後部要素のアクセントが保存されるのが普通である。また、後部要素が平板調の場合には、この後部要素の先頭に複合語アクセントが付与される(例:南+ア]フリカ)。漢語の場合、一見したところ、この「後部要素のアクセントを保存する」という原則が破られる場合がある。例えば「理論」+「力学」という複合語のアクセント型に見られるゆれである。これを説明するためには漢字音がもつ挿入母音の性質と、音読みの漢字は2文字で最大4モーラであるという事実に着目すべきである。例えば「力学」はrik<i>gak<u>のように、長さが4モーラでありながら、挿入母音を差し引けば、実質2モーラなのである。したがって、この形式には複合アクセント規則のうちもっとも無標のものが適用されやすい、つまり第二要素の先頭にアクセントを置くという形式が発生するのである。つまり「南+アメリカ」型のアクセントを生み出しやすい理由を漢語の複合語は初めから備えているということになるであろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
借用語の音韻処理に関しては理論的なモデルの構築に一定のめどがついた。そのような意味ではおおむね順調に進展していると言えるであろう。
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Strategy for Future Research Activity |
漢語、外来語の音韻処理を処理するモデルを理論的に構築するだけではなく、そのモデルの妥当性を示す必要がある。複合語アクセントに関してはこれまでも多くの研究がなされてきたが、外来語の複合語と漢語の複合語の関係に共通性を見出すような主張は見当たらないので、その空白を埋めたいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は30万円のうち、学会旅費として8万円ほどを予定しているが、残りは文献および文献調査費(他大学の研究者訪問)にあてる予定である。
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