2013 Fiscal Year Research-status Report
日英心理動詞構文の使役の意味に関する照応およびアスペクト的現象の研究
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24520424
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Research Institution | Shiga University |
Principal Investigator |
板東 美智子 滋賀大学, 教育学部, 教授 (40304042)
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Keywords | 日本語心理動詞 / 非対格自動詞 / V-(s)ase 使役構文 / 出来事の開始時点 / 自分 / 出来事名詞 / 後方照応 / 語用論的コントロール関係 |
Research Abstract |
平成 25 年度は、主に、以下の二点について研究および発表を行った。 1. 日本語の中でも、とりわけ、心理動詞の非対格自動詞が V-(s)ase 形の使役構文に用いられる例、あるいは、「監督読み」と呼ばれる非対格自動詞の使役構文の例の分析を行った。そこで、一見例外的な使役構文をもとに、-(s)ase 補文の動詞句が表す出来事の開始時点の可視性 (visibility) が V と -(s)ase の接辞化の可否を左右するということを示し、素性構造を用いてそのメカニズムを形式化した。 2. 日本語の心理動詞の使役構文にみられる「自分」の後方照応の現象のうち、特に、主語に「自分の + 出来事名詞 」がくる構文についてその「自分」の束縛関係について統語的に分析した。さらに、同じ「自分の + 出来事名詞」が「経験者」を V-(s)ase の構文において、出来事名詞の種類によって、後方の「経験者」が「自分」先行詞になる例と、「話者」が先行詞になる例を挙げ、 そのメカニズムを統語的に分析し、提案した統語構造によって後方照応も、一見語用論的な照応も構造上の C-command に従うことを仮定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記の研究実績の概要 1. については、「非対格自動詞の V-(s)ase 使役他動詞化の可否と出来事開始時点の可視性」のタイトルで岸本秀樹・由本陽子編 論文集『複雑述語の現在』2014年1月30日ひつじ書房 に発表した。 上記の研究実績の概要 2. については、"Zibun-no eventive nominal and its binding phenomena in Japanese psych-causative verb construction" のタイトルで Workshop on Altaic Formal Linguistics (WAFL 10) に応募し、Talk として採択された(発表は 2014年5月4日、於:MIT)。
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Strategy for Future Research Activity |
平成 24 年度は、主に、日本語の心理使役動詞の意味情報、および、その動詞と共起する主語と目的語の名詞句がどのように構成性の原理によって計算され文としての意味を生成しているかを素性構造を用いて形式化した。またその意味的素性構造によって「自分」がどのように解釈されているかを考察した。平成 25 年度は、主に、日本語の心理使役動詞構文と、主語にくる「自分の + 出来事名詞」の統語的特徴を観察・考察して、二種類の統語構造を仮定した。今後の研究では、今まで提案してきた意味情報を記載した素性構造と、二種類の日本語の心理使役動詞構文との間の対応付け(リンキング)について考察していく予定である。 更に、これまでの発表から明らかになった問題点、(i) 「自分」の語用論的コントロールを統語的に分析する場合の統語構造の妥当性、(ii) 心理使役動詞構文が量化詞(「だれも」)と共起する場合、あいまいなスコープの解釈が出る場合の分析、について検討を重ねて行く予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
海外の学会発表が平成26年度(2014年5月4日)に決まったため、その発表準備にかかる資料合いや、英語母語話者の英文校閲の謝金、及び、渡航費用を次年度使用額とした。 主に、(1) 2014年5月4日に MIT で開催される Workshop on Altaic Formal Linguistics (WAFL10) にて口頭発表をするための海外出張費用、(2) 同プロシーディングスに掲載される論文の英文校閲の謝金、(3) 更なる資料収集、(4) 国内外の学会参加のための交通費に使用する予定である。
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Research Products
(1 results)