• Search Research Projects
  • Search Researchers
  • How to Use
  1. Back to project page

2012 Fiscal Year Research-status Report

語形成による事象叙述から属性叙述へのタイプシフト:語彙意味論からのアプローチ

Research Project

Project/Area Number 24520427
Research Category

Grant-in-Aid for Scientific Research (C)

Research InstitutionOsaka University

Principal Investigator

由本 陽子  大阪大学, 言語文化研究科(研究院), 教授 (90183988)

Project Period (FY) 2012-04-01 – 2016-03-31
Keywords事象表現 / 属性表現 / 複合動詞 / 特質構造 / 語彙意味論 / 生成語彙論
Research Abstract

今年度は、まず「動詞+動詞」型と「名詞+動詞」型の複合動詞が連用形になりコピュラを介して名詞を修飾する属性表現として用いられ得るための条件とその意味解釈について考察した。前者のタイプについては語彙的複合動詞が属性表現にシフトする場合は非常に稀であるがその理由が意味的に説明されることを明らかにした。また、本課題の準備として考察していた「動詞+すぎる」が表す2種類の属性表現については、その派生メカニズムと意味解釈についてを明らかにし、その成果は論文として『日中理論言語学の新展開』に掲載された。
つぎに、語彙部門で形成される「動詞+動詞」型の複合動詞について、特に由本(2005)では捉えられなかった、後項(V2)の本来の意味が薄まり、それに伴い多様な動詞(V1)と結合できる生産性をもつようになっているものについて考察した。複合動詞リスト(国立国語研究所作成)の中で生産性が高いV2(接尾辞化しているとも言われる「込む」以外に「出す」「あげる」「つける」「あがる」など)が、V1の意味や項構造をどのように変更しているかに注目し行った調査結果により以下のような仮説を実証した。①生産性の高いV2のほとんどは、移動や位置変化を表し場所概念を包入している動詞である。②それらのV2は、V1においては随意項あるいは語用論的にしか含意されない要素である場所概念を「項」として創出する効果をもたらす場合が多い。③日本語の語彙的複合動詞形成の典型的動機となっているのは②の効果であり、この点でゲルマン系言語をはじめ諸言語において動詞の意味を拡張する接辞化にも共通点が見られる。以上の研究成果は国立国語研究所主催の共同研究会や国際シンポジウム、日本言語学会の大会などで公表した。この結論が正しいとすれば、語彙的複合動詞が属性叙述表現になりにくい理由について新たな観点からの説明が可能になるかもしれない。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

事象叙述表現から属性叙述表現へのタイプシフトについては、本課題の準備として交付期間以前から分析を進めていた、「動詞+動詞」型の語彙的複合動詞と、統語的複合動詞では「動詞+すぎる」についての研究について一応の成果を発表するに留まっており、それ以外のものについての分析は進められていない。特に、動詞の結果状態を表す概念について、スケール構造分析に基づいた属性概念の詳細な意味特徴の書き分けができる形式化を目指していたが、まだ考察は進んでいない。
その理由として今年度は、「動詞+動詞」型の語彙的複合動詞のうち、特にV2の意味が本来の意味から拡張している場合について、その意味的シフトとV1との共合成のメカニズムについての研究を進めてきたということがある。この研究の成果によって、複合動詞形成における意味合成を特質構造を用いることによって精緻化することの必要性を明確にすることができた。とりわけ、V1の事象タイプがV2によってどのように変更されるか、また、逆にV2の意味がV1との結合によりどのように強制され拡張されるかという問題について考察し、これまで句のレヴェルでのみ想定されてきた意味合成のメカニズムが複合語の内部においても起こり得ることを示す事ができた。

Strategy for Future Research Activity

まず当初の計画通り、動詞の意味記述において含意される結果状態がどのようなタイプの属性であるのかを、単一の動詞連用形のみならず、「動詞+動詞」型、「名詞+動詞」型、「副詞+動詞」型の複合語全体に視野を広げて調査し、またそのタイプの違いがどのような形態統語的ふるまいの違いに対応しているのかを考察する。その結果を踏まえて、動詞や形容詞類の意味記述としてどのような素性の区別が必要であり、また、それらをどのように生成語彙論の枠組みの中で形式化するかについて考えていきたい。さらに、同様の観察や分析が英語の現在分詞および過去分詞や、「名詞+動詞の分詞形」や「形容詞(副詞)+動詞の分詞形」の複合語による叙述にも適用できるかどうかを検証し、事象叙述から属性叙述へのタイプシフトについてのより普遍的で原理的な理論を構築することをめざす。
もう一つ新たな観点として「ひと+動詞連用形(「ひと働き」など)」または「ひと+名詞(「ひと汗」など)」型の複合語が「する」や特定の動詞と結合して複雑述語を形成する場合に起こっているタイプシフトについての考察も進めようとしている。この問題については伊藤たかね氏(東京大)、杉岡洋子氏(慶応大)との共同で研究を進めている。動詞と名詞の間で叙述のタイプが交互にシフトする現象について英語の軽動詞構文と呼ばれているgive, make, have, getなどが動詞のゼロ派生名詞との共起によって複雑述語を形成する場合との比較対照も行いながら明らかにしていきたいと考えている。

Expenditure Plans for the Next FY Research Funding

次年度は「動詞+動詞」型の語彙的複合動詞についての昨年度からの研究成果を海外の出版社から刊行される論文集に寄稿する予定であり、そのために英文の推敲を英語母語話者に依頼するため謝金が必要となる。また、この成果を発表するために国内外に出張する予定があるため、その旅費を支出する予定である。
また、「ひと+動詞/名詞」型の複雑述語構文の研究は、伊藤たかね氏(東京大学)、杉岡洋子氏(慶應大学)との共同で行っているため、研究打ち合わせのための旅費や諸費用を支出する予定である。また、この研究との関連で、「一+動詞/名詞」型の複合語についても考察するが、この表現については中国語からの影響の有無を調査することも必要であり、その調査のために台湾に出張する旅費も支出する予定である。
その他理論言語学関係の図書や情報収集のための費用、成果発表のための諸費用を支出する予定である。

  • Research Products

    (5 results)

All 2013 2012 Other

All Journal Article (3 results) (of which Peer Reviewed: 2 results) Presentation (2 results) (of which Invited: 1 results)

  • [Journal Article] 動詞+動詞型の複合動詞2013

    • Author(s)
      由本陽子
    • Journal Title

      レキシコンフォーラム

      Volume: 6 Pages: XX-XX

    • Peer Reviewed
  • [Journal Article] 語彙的複合動詞の意味解釈再考2012

    • Author(s)
      由本陽子
    • Journal Title

      言語文化研究プロジェクト2011

      Volume: 1 Pages: 89-99

  • [Journal Article] 「動詞+過ぎる」と述語名詞としての「動詞+すぎ」2012

    • Author(s)
      由本陽子
    • Journal Title

      日中理論言語学の新展開(影山太郎・沈力編)

      Volume: 3語彙と品詞 Pages: 123-143

    • Peer Reviewed
  • [Presentation] 動詞複合による項の創出と主題役割の変更

    • Author(s)
      由本陽子
    • Organizer
      NINJAL International Symposium on Valency Classes and Alternations in Japanese
    • Place of Presentation
      国立国語研究所
    • Invited
  • [Presentation] 日本語語彙的複合動詞の生産性と二つの動詞の意味関係

    • Author(s)
      由本陽子
    • Organizer
      日本言語学会第145回大会
    • Place of Presentation
      九州大学

URL: 

Published: 2014-07-24  

Information User Guide FAQ News Terms of Use Attribution of KAKENHI

Powered by NII kakenhi