2015 Fiscal Year Research-status Report
「文埋め込み」に見られる言語の創造性と普遍性についての研究-語順と句構造を中心に
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24520429
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
稲葉 治朗 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (10323461)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ドイツ語学 / 後域 / 語順 / 統語構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、前年度に引き続き、まずは国内外における近年の研究動向の把握に努めるなどの基礎的研究を行った。統語論研究およびドイツ語学研究を中心として、図書や学術雑誌(インターネットを含む)を収集し、研究基盤の形成に努めた。また、学会や研究会・ワークショップへの参加などを通じて、専門家との議論や情報交換なども積極的に行った。 具体的な研究としては、当年度は、基盤とする統語理論(モデル)における「語順」の取り扱いについて考察を行った。従来の統語論研究においては中心的なテーマの一つであった語順が、近年の理論的研究においては、統語部門ではなく音韻的な現象として扱うべきだという主張がなされている。これに対して研究代表者は、自らの主要研究対象の一つであるドイツ語の後域(特に不定詞補文)に特に注目しながら、検討を行った。英語などと比べてドイツ語は、「自由語順」を比較的広く許容する言語であり、統語構造との関連といった問題をはじめとして、語順にまつわる現象を考える上では、是非とも検討に加える価値があると思われたからである。経験的データに基づいた検証により、ドイツ語においては、まさにそうした語順のヴァリエーションの存在により、語順と統語構造および意味解釈が有機的に関連しているのではないかと考えられる現象があることが認められた。こうしたテーマは、最先端の統語理論研究の動向を見据えながら慎重に検討を加える必要がある領域であり、今後の研究課題でもあるが、当該年度に行われた二度のワークショップでの発表において、こうした研究領域に関する問題提起を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成26年度から27年度にかけて所属が広島大学から東京大学に変更となり、生活の全ての面において大きな変化となった。特に教育と学内業務に関する仕事量は新勤務先において激増し、公私において新しい環境に適応することにも時間と努力が必要であった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、国内外における研究動向の把握に努めつつも、これまでの研究成果をまとめ上げることを目標とする。研究期間の前半に主に行ってきた、語順を巡る実証的な研究が、近年の統語理論の中にどのように位置づけられ得るかについて、一定の結論を出し、成果として発表することを目指す。
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Causes of Carryover |
研究期間のこれまでの年度と同様に、平成27年度もドイツへの出張(ドイツ言語学会への参加)を予定していたが、所属先の変更により当初は予期できなかった業務が入ることになり、結局27年度は一度も海外出張に行くことが出来なかったことが、最も大きな理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度はおそらく、デスクトップ型のパーソナルコンピューターを購入する必要が生じると思われる。また、当年度は是非とも、研究成果の発表や専門家との議論などのために、海外出張をするつもりである。
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Research Products
(3 results)