2016 Fiscal Year Annual Research Report
On creativity and universality of language observed in "sentence embedding"
Project/Area Number |
24520429
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
稲葉 治朗 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (10323461)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ドイツ語 / 語順 / 名詞修飾表現 / 文補部 / 関係文 / 後域 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度はまず,ドイツ語を始めとする諸言語における名詞修飾表現の語順に関して研究を行った。名詞を修飾する語句としては,形容詞句,前置詞句,分詞句,関係節などさまざまな範疇がありうるが,言語ごとおよび修飾要素の範疇ごとに,その生起位置は異なる。こうした現象に対しては従来,各主要部の位置(隣接性)に焦点を当てた分析がなされてきたが,本研究では,主要部名詞と修飾語句は同一の音韻的単位の中にある,という制約を提唱することにより,説明を試みた。ここで根底にあるのは,統語的境界が音韻的境界に対応するというテーゼである。修飾語句のタイプおよび対象とすべき言語などの点において,さらに慎重な検討が必要ではあるが,語順に関わる問題を音韻部門における制約に帰することができるという可能性を提示したという意味においては,本研究における提案は,近年の生成文法理論における研究の方向性とも合致するものである。 本研究全体としては,特にドイツ語を中心として,まずは文補部の生起位置およびその生成について,従来の研究も振り返りながら,いわゆる外置移動分析の問題点を指摘した。そのうえで,文補部と同様にドイツ語の後域に生じうる不定詞補部や関係文についても研究対象として扱った。従来の研究においては,これらの要素は同じ原理に基づいて後域に配置されるとみなされることが多かったが,本研究においては,それぞれの要素の相違点を明らかにし,それらについての原理的な説明を試みた。ここで取り上げられた問題は基本的に,語順というものが大きな役割を果たしている現象であり,これらが最新の生成文法理論の中でどのように捉えられるべきかは,統語論研究全体の中で慎重に検討されるべき課題であり,今後も考察していくつもりである。
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Research Products
(3 results)