2013 Fiscal Year Research-status Report
言語構造に符号化された手続き的制約と語用論的推論についての研究
Project/Area Number |
24520430
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
大津 隆広 九州大学, 言語文化研究科(研究院), 准教授 (90253525)
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Keywords | 言語構造 / 照応 / 省略 / 直示表現 / 解釈的類似性 / メタ表示 |
Research Abstract |
関連性理論に基づく手続き的説明の発展に伴い、言語表現や構造自体もそれを含む発話の解釈への計算に関する情報を符号化しているということが広く認識されている。しかしながら、その議論はまだ不十分である。本研究において、本年度は、照応表現(動詞句照応と動詞句削除)、直示表現などの言語構造に焦点をあて、それらに符号化された決定不十分な意味が明示的な伝達にどのように貢献するか、その解明について研究を行った。 これらの最小限に言語に符号化された構造には、最小限の処理コストで正しい解釈へ導く言語的糸口が含まれているものの、それぞれの構造は、異なる手続き的方法で発話解釈に貢献していると言える。do it照応と動詞句削除を比べた場合、一次的表示として認知した表示の表示(メタ表示)から指示対象にアクセスする手続きを符号化している点は共通である。しかし、唯一の違いは、do it照応が意図された指示対象との内容においての解釈的類似性に基づくものであるのに対して、動詞句削除のような統語的削除の場合は、形式の類似性に基づいている点である。これらの言語構造の理解のプロセスは、それを含む発話の解釈が明示的な言語的手がかりをもとに行なわれるという点で飽和という意味充足プロセスであることがわかる。 さらに、照応表現と直示表現は、発話解釈において聞き手の注意の焦点を異なる方法で操作していると言える。照応表現では、注意の焦点を聞き手の頭の中ですでに確立されたまま保つように指図している。それに対して、直示表現では、聞き手の注意の焦点を談話において既存のものからコンテクストにより派生された特定のものへと変化させる働きがある。こうした手続きは談話ダイクシスでも当てはまると考えられる。 手続き的分析は、言語表現の構造がそれが生じる発話の解釈にいかに異なる貢献を行なうか、詳細に記述できる点で有効である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の進捗状況はおおむね順調であるが、著書の出版準備と出版後に研究者の方々からいただいたコメント等の整理に多くの時間が費やされ、研究の進度が滞った時期があった。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度の研究の推進方策として、前年度からの継続として、データの収集と分析を行なう。具体的には、照応表現、直示表現、省略表現、自由拡充表現などのそれぞれのデータとコンテクスト、意味拡充のプロセス、拡充される要素などについて明確化する。また、国内外の学会参加と他大学研究者からの助言や示唆、および意見交換などを通して、研究成果の公表を行なう。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
著書出版費用として100万円程度の支出を想定していたが、別の予算により支出が可能となったため。 国内外での学会発表と資料収集、および関連性理論研究会主催のための費用に充てる予定である。
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Research Products
(6 results)