2013 Fiscal Year Research-status Report
状態性述語の総合的研究:日本語形容詞類と繋辞の形態・統語・意味
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24520435
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Research Institution | The University of Kitakyushu |
Principal Investigator |
漆原 朗子 北九州市立大学, 基盤教育センター, 教授 (00264987)
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Keywords | 状態性述語 / 形態論 / 統語論 / 意味論 / 直接/間接修飾 / 準体法 / 数量詞的状態記述 / 否定 |
Research Abstract |
平成24年度に引き続き、研究代表者である漆原と連携研究者である岸本、多田で、状態性述語に関する研究打ち合わせを通して議論を深めた。その成果を、11月9日(土)日本英語学会第31回大会ワークショップ「状態性述語の形態・統語・意味をめぐって」で発表、通言語的にも動詞とは異なる興味深い属性を有する日本語状態性述語の形態的実現・統語構造・意味解釈に関する分析を提示した。 まず、漆原発表論文「節およびDP内部における日本語形容詞類の形態的実現」では、日本語も英語・ロマンス語などと同様direct modificationとindirect modificationを有するが、それらの諸語においては両者が統語的位置によって弁別されるのに対し、日本語は完全な主要部終端言語という特性から、形態的実現によって区別されると主張した。 次に、岸本発表論文「状態述語と感嘆表現」は「なんという」という感嘆詞から作られる断片的な感嘆表現を用いて、形容動詞に連体形を名詞相当表現として用いる用法(準体法)が残っていることを示した。 最後に、多田発表論文「状態性と測定可能性」では、測定の用法を持つ「りんごが籠に山盛りである。」といった表現のみが数量詞的状態記述(Quantificational State Description (QSD)) になれる理由を、QSDがNQ/MPと共に単調性条件 (Monotonicity Condition) (「測定される表現があらわす対象の部分構造に対して、その順序関係を順守するような測定値が与えられなければならない。」) (cf. Schwarzschild(2006), Nakanishi(2007))に従うと仮定すれば説明されると論じた。 その他、海外学会、国立国語研究所のプロジェクトにも参加し、発表した。いずれも、質疑応答等から今後の研究への大きな示唆を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
言語学・英語学において最も多く研究者が集まる日本英語学会のワークショップ発表に応募、採択された。当日も関連した研究を行っている第一線の研究者が参加し、盛んな質疑応答が行われた。 また、連携研究者である岸本は形容詞や複雑述語と否定に関する論文や研究発表を行った。 さらに、連携研究者である多田も国立国語研究所のプロジェクトの発表会において、本課題研究の成果の一部を取り入れた研究を発表、さらに進展させることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は過去2年度の研究会、ワークショップ発表等での議論をふまえ、以下の各項目の調査研究を進める。なお、平成25年度に九州(福岡大学)において学会ワークショップを行ったので、平成26年度は関西圏(神戸大学など)で研究会あるいはワークショップを企画する予定である。 漆原)より広範な通言語的事実を収集し、直接/間接修飾(direct/indirect modifications)に関する分析を深める。また、朝鮮語・上代~中世日本語の形容詞類の先行研究を精査し、知見を深める。 岸本)相・法・否定の生起に関する統語的分析と状態性との相関についての意味的分析を行う。 多田)数量詞的状態記述の分析を続けると共に、恒常的属性記述(individual-level description)と一時的状態記述(stage-level description)の相違に関する形態統語的・意味的分析を行う。特に、擬態語動詞、擬態語形容動詞の分布と解釈を精査する。 漆原・岸本)関西方言における形容詞の「ク」落ち現象(「おもろない」)について分析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
想定していた研究打合せが短縮された結果、旅費支出が計画を下回ったため。 平成26年度の研究打合せ旅費に使用する。
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Research Products
(8 results)