2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24520438
|
Research Institution | Tokyo Kasei Gakuin University |
Principal Investigator |
橋本 文子 東京家政学院大学, 現代生活学部, 准教授 (20237928)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 音韻論 / 音声学 / 方言学 / 音変化 / 言語学 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は前年に引き続き、東北方言で現在どのような音声的特徴が観察されるのかを探るため、方言の音声録音と関係する文献や資料の収集・調査にあたった。 今年度は秋田県秋田市と岩手県盛岡市で方言音声の録音を行った。秋田市では教育委員会のご協力をいただき、高年層被験者の方2人、中年層被験者の方2人、少年層被験者として小学生2人の音声録音をさせていただいた。盛岡市では地元の方言研究者から盛岡方言についてのお話を聞かせていただき、同時に高年層被験者としてその方の音声録音をさせていただいた。盛岡市では他に、中年層被験者として勤労福祉センターに勤務の方2人、少年層被験者として小学生2人に音声録音のご協力をいただいた。 夏には仙台で行われた日本行動計量学会に初めて参加し、各種の行動を計量的に量るとはどのようなことか、またその方法について少し知ることができた。12月には青森県八戸市で行われた「南部弁の日」のイベントに出席し、青森から岩手に至る南部弁の多様性について考える良い機会となった。イベントでは、八戸市や釜石市の方言の語り部による昔語りや、小学生による方言を使った楽しい劇や、地元の劇団の方言劇などの催しがあり、方言に熱い思いを持つ地元の皆さんとともにそれらを体験することができた。 また今年度には、前年度に収集した八戸市での音声録音の中にある東日本大震災に関する口述について、文化庁からの依頼で震災に関する記録を収集しているという研究者から参考資料として使用したいとの申し入れがあった。収集した資料が他の研究等にも役立ててもらえることは予想外の嬉しい事であり、被験者として協力して下さった方々に改めて感謝したい。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究の進捗状況については、当初の計画と比較すると、全体的にやや遅れていると言わざるをえない。それは、当初の計画では東北地方全体を網羅的に調査することを考えていたのだが、年々多忙になる仕事の状況と時間的制約の中では、当初の計画通りに実行することはなかなか困難になりつつあるためである。 また、実際に各地域で調査を行ってみると、どの地域の調査もとても興味深く、それぞれの方言の持つ奥深さに触れるにつれて、短い期間でそれらの地方の方言について把握するのは難しいと感じるためである。また、さらにそれらの方言を深く研究する必要性を感じるために、調査地点を広げられないでいるというところもある。 そのため、当初計画した数の調査地点を、計画通りに調査するにはなかなか至っていないというのが現状である。しかし、調査した地域についてのデータはある程度蓄積されつつあり、その分析については今後順次進めていきたいと考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在までの達成度の項目で述べたように、当初の計画にあったように東北地方全体を網羅的に調査していくことは、時間的制約などのために困難であろうことが予想される。そこで今後は調査地域を当初の計画よりは狭めながらも、有益な結果が得られるように検討を加えて研究を進めていきたいと考えている。 また、本研究を進めていきながら、これまでさまざまな場面で方言学や日本語学を研究されている研究者の方々と知り合いになることができた。本研究は音声的・音韻的立場から東北方言を研究しようとするものであるが、方言学や日本語学の知識も欠かすことができない。そこで、今後もそれらの研究者とより交流を図りながら、時には助言を求めるなどして研究の進展を図っていきたいと考えている。 また今後は、これまでのデータの整理や分析などに力を入れながら、さらに北東北方言地域から南東北方言地域へと調査地点を広めて方言音声の録音を行っていくことになるが、研究を進めていく上で適宜調査資料等の整理などを補助していただける方を頼みたいと考えている。また、できれば東北方言に明るい研究者の協力やアドバイスを受けながら、時には共同で研究を行うなどして研究の幅を広げていけるようにしたいとも考えている。また、本研究をきっかけに培うことができたさまざまな人との繋がりも今後大切にしていきたいと考えている。
|
Causes of Carryover |
次年度使用額として少なからぬ額が生じている理由は、研究実績の概要及び現在までの達成度の項目で述べたように、当初は東北地方の各地点を網羅的に調査することを計画していたが、実際の方言音声の録音地点はまだそれほど多くはないためである。 また、これまで調査した地点でのデータの蓄積についてはある程度進んでいるが、その分析についてはまだまだこれからという状況にあるため、分析のために必要となるであろう予算がまだ支出されていないためでもある。 なお、3月に行った岩手県盛岡市での調査の費用は、年度末ということで勤務校の会計の締めに間に合わず、次年度分の支出として扱われることになったため今年度の支出には含まれていない。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
今後は北東北方言地域から南東北方言地域へと方言の音声録音を行う地域を広めていき、データの蓄積をさらに進めるとともに、これまでに録音したデータの分析を行っていきたいと考えている。そのためには、適宜外部にデータの分析を依頼したり、方言の分析に協力いただける方の力を借りるなどして分析のスピードを上げていかなければならない。 また、人件費や謝金については、これまでどのような場合に支出が可能なのかよくわからないまま支出が控えられてきたところがあったが、今後は必要なところには積極的に支出するなどして研究を円滑に進めていけるようにしたい。
|