2013 Fiscal Year Research-status Report
日本人英語学習者の英単語境界知覚プロセスに関する検討
Project/Area Number |
24520444
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Research Institution | University of Marketing and Distribution Sciences |
Principal Investigator |
山本 勝巳 流通科学大学, 商学部, 准教授 (40249818)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 誠子 神戸学院大学, 経営学部, 准教授 (90269879)
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Keywords | 日本人英語学習者 / 音声言語 / 単語境界 / TTS / 語彙レベル |
Research Abstract |
言語情報を処理する際には心的辞書に蓄積されている語彙情報にアクセスする必要があると考えられる。Levelt (1993)は母語話者の言語処理過程について心的辞書 (レキシコン)に着目したモデルを提示している。こうした言語処理モデルを踏まえた日本人英語学習者の言語処理過程に対する先行研究は読みに関するものが多いが,音声言語の処理に際しても同様のプロセスを経由する必要があると考えられる。ここで問題になるのは音声言語の場合,読みと異なり基本的に連続する音韻列から適切に単語を切り出す必要があるという点である。そこで,日本人英語学習者の単語切り出しの手がかりについて検討するために,平成25年度は以下の聞き取り実験を実施した。 今回の実験ではVOAで提供されている英文ニュースを素材として,TTSによって100語/分程度に速度調整をした54個の刺激文を用意した。実験協力者には大文字・小文字の区別や文末句読点を削除して打ち出したプリントが配布された。彼らへの課題は,ルームスピーカから流される英語音声を聞いて,単語境界と思われる箇所にスラッシュを入れていくというものであった。この際,音声は一律に5秒間隔で2回提示された。彼らはまた事前にTOEIC Part II形式の練習問題30題を受験した。 実験の結果,単語境界の正答率は80%以上であった。その一方で,単語境界の判断が低くなるのは,(1) 語彙レベルが低いもの (JACET8000に基づく),(2) 前後のパーツとの組み合わせで別な語となりうるものという2つの要因の影響が観察された。 この結果をもとに,引き続き音声面での特徴について,分析を進める予定である。一方で,今回の実験では文字列を見て回答することもできたようである。そうした視覚情報の影響を減らすために,単語をランダムに配列した刺激文を用いた同様の聞き取り実験も予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初は英語話者の発話データベースからの抜粋を利用して,聞き取り実験を行う予定であったが,想定していたデータベースが利用できないために,新規に素材文を設定する必要があった。また音声刺激についても新たに作成する必要が生じた。 この際,使用するTTSアプリケーションの利用に研究代表者が不慣れであったため,音声刺激の作成に時間がかかってしまった。しかし,研究分担者の協力もあって実験用音声が作成でき,実験は進行中である。また研究代表者もTTSアプリケーションの利用に習熟しているので,今後の聞き取り実験の準備には目処がたったと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初予定していた実験協力者の母語である日本語・ビープ音を対象とした無意味語実験は必要ないと考えている。今回のVOAの英文・およびその語順を入れ替えた刺激文を利用した聞き取り実験に加えて,日本人学習者にとって親密度の極端に低い単語を用いた曖昧文の意味判断実験によって,文法知識や親密度レベル以外に彼らの単語境界の判断に影響する要因が検討できるものと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
聞き取り実験の一部を無報酬で行ったため,謝金部分が軽減されたのが主な理由である。 今年度は英語のレベルが上級と想定できる実験協力者に対しても同様の実験を行いたいと考えている。その部分で多くの謝金が必要になると考えられる。
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