2012 Fiscal Year Research-status Report
中国東南方言におけるヴォイスの構文ネットワークに関する研究
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24520451
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
佐々木 勲人 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (40250998)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ヴォイス / 主観性 / 粤語 / 受動文 / 使役文 / 処置文 / 受益文 |
Research Abstract |
中国東南地域の諸方言におけるヴォイスに関わる構文間に形成される様々なネットワークのあり方を詳細に記述するために,『東南方言比較文法研究―寧波語・福州語・厦門語の分析―』(2002年,好文出版)の枠組みに基づいて,湘語と粤語のデータを収集し,方言類型論の観点から分析を行っている。 まず、方言データの収集に関しては、本年度は当初予定していた湘語のデータ収集に代えて、粤語のデータ収集を行った。粤語についてはすでにさまざまな記述文法書があるので、それらを参考にして調査項目を精査した。 方言データの収集を行うと並行して、ヴォイス構文のネットワークに関する分析を行った。今年度は、認知言語学の概念である主観性の観点から、中国語の受動文、使役文、処置文、受益文において認知の主体である発話者がどのように言語化されるかを詳細に検討した。中国語は総じて話者を言語化していく傾向が強く、客観的事態把握が優勢であることが明らかとなった。中国語では、受動文の多くが不如意の意味を表し、感情表現に使役文が好んで用いられる。また、日本語の逆行態標識ややりもらい表現のように、話者に向かって動作が行われたことを示す文法標識も持たない。従来のヴォイス研究において個別に論じられてきたこれらさまざまな現象に対しても、主観性という観点を導入することによって、統一的な説明を与えることが可能となることを明らかにした。 これらの成果は、学術論文としてまもなく公刊される予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
湘語のデータ収集に関しては、初年度ということもあり、現地での調査は実現しなかった。代わりに行った粤語のデータ収集については予定通りに進んでいる。 ヴォイス構文のネットワークについては、主観性という新たな観点を取り入れたことによって大きな進展があった。受動文や使役文、受益文において一人称である“我”が言語化されることの意味について、これまでとは異なる視点から分析を行うことができた。また、この成果を学術論文にまとめ、公表することもできた。
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Strategy for Future Research Activity |
ヴォイス構文のネットワークに関しては、取得動詞を用いた受動文の分析を中心に分析を行う予定である。東南方言の受動文や使役文,処置文,受益文に関する研究では,授与動詞の関与が指摘されてきた。しかし,一部の方言では,語彙的に授与とは正反対の取得動詞がこれらの構文を構成することが知られている。湘語の先行研究においてもそうしたデータがいくつか示されている。こうした現象に関して、文法化の観点から分析を行っていく。 昨年度に引き続き、粤語のデータ収集を行うとともに、湘語のデータ収集にも着手する予定である。筑波大学の協定校である湖南大学を拠点に調査を実施する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の研究費使用計画はおもに二つである。一つは中国における方言データ収集のための旅費と謝金であり、もう一つはヴォイス構文のネットワークに関する分析に必要な図書とコンピュータ関連機器の購入である。具体的な内訳は以下の通り。 (内訳)物品費:200,000 書籍費、コンピュータ関連機器 旅 費:300,000 データ収集のための謝金 謝 金: 50,000 資料整理、インフォーマントに対する謝金 その他: 50,000 文具、コピー代 なお、収支状況報告書で次年度の使用額となっている科学研究費については、方言データ整理のために使用するパソコンなどの物品費としてすべて支出が確定している。
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