2015 Fiscal Year Annual Research Report
外国人患者と日本人医療者間の医療コミュニケーション適切化のための社会言語学的研究
Project/Area Number |
24520454
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
辛 昭静 東京大学, 大学院情報学環, 客員研究員 (40597192)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 医療コミュニケーション / 丁寧表現不使用 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,外国人患者が日本人医療者とのコミュニケーション場面でどういう困難に遭遇しているか調査により問題の実態を明らかにし,その解決・軽減策を提案することを目的とした。 【調査1】医師の丁寧表現不使用に対する日本人患者と日本人医師の意識比較 調査1では,診療と直接関係のない発話と直接関係のある発話における医師(30代医師と60代医師)による丁寧表現不使用に対する患者と医師の認識を調査した。その結果,患者・医師ともに,診療と直接関係のある表現よりは,直接関係のない表現に対して,より否定的な評価を下していることが分かった。 【調査2】医師の丁寧表現不使用に対する日本人患者と韓国人患者の意識比較 調査2では,(日本在住の)日本人患者(566名)と(韓国在住の)韓国人患者(529名)を対象に,診療場面における医師の丁寧表現不使用に対する評価を調べた。調査1の結果を受けて,診療と直接関係のある表現「薬にアレルギーはないんだよね?」を取り上げ,①60代医師と30代医師の発話,②今日初めて診てもらう医師(疎の関係)といつも診てもらっている医師(親の関係)という設定で,評価尺度12項目について5段階評定を行った。 調査実施前には,診療場面における医師の丁寧表現不使用に対して,日本人よりも否定的な印象を抱いている韓国人は,日本で同じ場面に遭遇した際に,日本人患者よりも「不愉快である」と感じる度合いが高いはずと予想し,従来の研究結果を参考に「医療コミュニケーション場面においても,日本人は親疎関係に対して,韓国人は年齢差に対してより敏感である」という仮説を立てた。しかし,分析の結果からは日本人患者同様,韓国人患者も医師との親密度に,より評価が左右される傾向がうかがえ,年齢差の影響が思ったより絶対的要因として働いていないことが示唆された。
|