2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24520456
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
吉枝 聡子 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 准教授 (20313273)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | イラン諸語 / パミール諸語 / ワヒー語 / 東イラン語 / ゴジャール / フンザ / 少数言語 / 記述言語学 |
Research Abstract |
2012年度は,パキスタンにおけるゴジャール・ワヒー語に関する言語調査,および,タジキスタン南部におけるタジク・ワヒー語に関する現地調査,を行い,その準備と成果のとりまとめを行う予定であった。しかしながら,タジキスタン調査については,出発直前に現地で生じた,突発的な軍事衝突による治安および通信手段の悪化のため,調査の本年度の実施を見合わせた。このため,2012年度はパキスタン調査のみを行い,具体的な作業内容は以下の通りとなった: 1,パキスタン北部・ゴジャール(北部フンザ)地域のゴジャール・ワヒー語主要村落(グルミット村)における言語調査(夏期46日間)を実施し,ワヒー語辞書の最終年度における完成に向け,収録済み語彙の逐語チェックおよび新語彙の収集を,インフォーマントの協力を得て行った。あわせて,同言語の文法分析に関する調査も実施し,同言語の場所・方向を示す前置詞・副詞に関するシステムについて言語データを収集した。 2,調査終了後,収集データの整理および成果のとりまとめを行った。特に上記の逐語チェックの結果,ゴジャール・ワヒー語の主要3村落間,また同一村落内の異なる地区間においても,発音,語義,用法等が異なる単語が少なからず認められ,その差異が研究開始当初に予想していた以上に大きいことが明らかとなった。この点により,今後の辞書編纂作業方針について再検討を行うことが必要となった。 3,このほか,今年度の語彙収集・確認調査から得られた成果を中心に,東京外国語大学語学研究所公開講座においてゴジャール・ワヒー語にみられる語彙の諸相に関する報告を行うなど,研究成果の公開に努めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1,本研究の主眼であるワヒー語辞書について,当初の研究計画通り現地調査を実施し,インフォーマントの協力による,収録語彙の第1回目の逐語チェックが完了した。ただし,上記「概要」に述べた通り,同言語の主要村落内・また同一村落間でも,発音,語義,使用実態について,予想以上の差異があることが判明した。このため,今後の編纂作業に関しては,これらのバリエーションについて,当初の予定より重点をおいて記述および考察を進めていくこととした。また,今後の現地調査で確保できる作業時間が限られるため,ゴジャール・ワヒー語の下位方言(主要3村落とこれ以外の周辺村落方言)差に関しては,作業の比重を修正し,規模を縮小して行うことが必要となった。 2,同言語の文法事象(場所・方向に関わる前置詞・副詞のシステム)について,対象となる言語データを予定通り収集した。現在,収集したデータの分析・考察を進めている。 3,2の文法事象についてはなお考察中であるため成果の発表は2013年度以降を予定しているが,語彙面に関しては,2012年度の現地調査結果をふまえ,報告を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
ゴジャール・ワヒー語の辞書の完成(2014年度末)に向けた編纂作業を継続する。今後に予定している作業は次の通りである。 1,収録語彙の発音・語義・語法に関する再クロスチェックを行う。主要村落間の発音・語義等にバリエーションが見られる場合には,これを極力詳細に記録するよう努める。 2,当該地域のエコロジー,通過・祭祀儀礼,生活文化関連語彙など,当該地域の特殊性を顕著に表す単語について,辞書に掲載するための写真・画像の収集と確認・整理を行う。 3,用例・例文の付加が必要な語彙(主要動詞等)の選定と例文を収集する。4,なお未記述の文法事象について,言語データの収集と分析を行う。 5,比率は当初より縮小したものの,可能であれば,下位方言間の差異に関する考察を行う。 これらの作業は全て,インフォーマントの協力による現地調査を中心とし,日本国内において調査前後の準備作業と収集済データの整理・分析,および成果のとりまとめと公開を行いながら進める。 なお,2012年度に見送りとなったタジク・ワヒー語に関する調査については,上記の辞書編纂作業の進捗状況とタジキスタンの情勢を見ながら,可能であれば実施したいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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