2013 Fiscal Year Research-status Report
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24520456
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
吉枝 聡子 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 准教授 (20313273)
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Keywords | イラン諸語 / パミール諸語 / ワヒー語 / 東イラン語 / ゴジャール / フンザ / 少数言語 / 記述言語学 |
Research Abstract |
前年度に引き続き,2013年8月~9月にパキスタンにおいてゴジャール・ワヒー語に関する言語調査を行った。今年度は,フィールド調査地域への経由地(カラコルムハイウェイ・チラース周辺地域)の治安状況が思わしくなかったため,イスラマ―バードでインフォーマント調査を実施することとした。具体的な作業内容は以下の通りである: 1,ゴジャール・ワヒー語主要村落のうち,グルミットおよびシスーニー村出身のインフォーマントの協力を得て,前年に引き続き,ワヒー語辞書について収録済み語彙のチェック,用例の確認,及び新語彙の収集作業をを実施した。あわせて,ワヒー語辞書に掲載予定の写真と語彙の照合作業,またインフォーマントが夏営地等で撮影した画像の確認と,それに基づく語彙補充作業を行った。さらに上記の作業と平行して,同言語の文法分析に関する調査も実施した。今年度は,特にその用法に乱れのみられる,使役接辞を付加して形成する他動詞・使役動詞・二重使役動詞と使役構文の使用状況について,文例を含む言語データを収集した。 2.調査終了後,語彙・画像データの整理,および,使役動詞と使役構文に関わる文法データの分析等,調査のとりまとめと分析を行った。 3,これまでの調査で得られた成果から,東京外国語大学国際日本研究センター対照言語学講座でワヒー語の能格構文に関する報告を行い,さらに,一昨年度東京外国語大学語学研究所で行ったワヒー語の語彙に関する口頭報告の修正・出版を行うなど,研究成果の公開に務めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.本研究の目的であるワヒー語辞書については,出版準備を進めるべく,ほぼ当初の研究計画通りインフォーマント調査を実施し,成果のとりまとめを行っている。現在,1回目の語彙チェックと用例収集は終了し,掲載予定の語彙チェックとより詳細な用例収集,またなお定義の確認が困難な語彙について,再検討を行っているところである。なお,今年度は経由地の治安上の理由で,フィールドでなくイスラマ―バードで調査を行ったが,本研究課題に係る作業は,既にデータ収集でなく収録語彙・画像のチェック段階に入っているので,研究の遂行に大きな支障は生じなかった。 2.同言語の文法事象(使役接辞による他動詞・使役・二重使役動詞・使役構文)について,対象となる言語データを予定通り収集した。この結果,当初の予想を超えた,用法上の乱れが確認された。この点については現在データ分析および考察を進めており,平成26年度以降に何らかの形での報告を行うことを予定している。 3.ワヒー語の特徴的な文法事象に関する報告を行うなど,研究成果の一部について公開を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
ゴジャール・ワヒー語の辞書の完成に向けた最終チェックと編集作業を継続する。最終年度である今年度に予定している作業は次の通りである; 1.前年度に引き続き,語彙と用例のクロスチェック作業を行い,平行して,なお定義が不確定な語彙について,用例を含めたデータを収集しつつ,再検討する。2.現在編集中の辞書では,言語データのみならず,現地のエコロジーや通過・祭祀儀礼,生活文化に関連の深い語彙については,可能な限り画像を掲載するべく,語彙と画像との照合を行ったうえ,印刷向けに画像を整えるなど辞書掲載準備のための作業を行う。3.用例・例文の必要な語彙について,引き続き収集と確認作業を行う。4.ワヒー語に特徴的な文法事象について,言語データの収集と分析を行う。今年度は前年度に引き続き使役構文,および関係詞文についての調査を予定している。5.1~4の作業をとりまとめ,最終的なワヒー語辞書出版のための準備作業を進める。6.これまで得られた研究成果について,可能な限り公開に努める。 なお,1~4に関わる作業は,現地調査におけるインフォーマントの協力を得ながら進める。
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