2014 Fiscal Year Research-status Report
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24520466
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
福田 哲之 島根大学, 教育学部, 教授 (10208960)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 戦国竹簡 / 清華大学 / 楚 / 秦 / 字体 / 書法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は研究計画にもとづき、新出資料を含む簡牘資料を戦国簡・秦簡・漢簡の三類に分けて各類の簡牘文字の調査・分析を継続して行うとともに、戦国簡牘文字における多様性の問題について、清華大学蔵戦国竹簡『保訓』を中心に検討を加えた。 『保訓』は周の文王の遺言を記した逸書であり、従来の戦国簡牘文字に例を見ない特異な字体で書写され、しかもその書法風格には曹魏の「三体石経」古文との間に緊密な共通性が看取される。 こうした『保訓』の字体に認められる特異性の要因について先行研究では、書写者の個人差に注目する見解と国別に関わる地域差に注目する見解とが提出されている。筆者はこれらの先行研究に対して再検討を加え、①『保訓』の字体と通常の戦国簡牘に用いられる俗体との間には、個人差や地域差といった要因では十分に説明し得ない顕著な様式上の相違が認められる、②『保訓』の字体には青銅器の銘文(金文)に用いられる正体との間に多くの共通点が認められる、との2点を指摘し、『保訓』の字体は通常の簡牘の書写に用いられる俗体とは様式を異にする雅体に属し、「三体石経」古文もそうした雅体の脈流に位置するものであったとの見解を提出した。 『保訓』に特別な雅体が用いられた理由として、通常の書籍や文書とは異なる周の文王の遺言という内容面における関連が考慮される。すなわち『保訓』の字体の特異性については、用途差に関わる要因に注目する必要があり、簡牘文字の多様性を考察する上で『保訓』は他に例を見ない独自の資料的価値をもつと考えられる。 この研究成果は学会・研究会で報告するとともに、論文にまとめて中国や国内の学術誌に発表した。また2015年4月10日・11日に中国(北京)で開催された「簡帛文字与書法学術研討会」に出席した際には、清華大学図書館老館において清華大学蔵戦国竹簡の一部を実見・調査する機会を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初計画で予定していた戦国・秦・漢の簡牘文字の調査・分析を継続して実施するとともに、清華大学蔵戦国竹簡『保訓』を中心に検討を加え、本研究の主題の一つである戦国簡牘文字における多様性の問題について、研究を進展させることができたから。 またこの研究成果は、国内の「第56回中国出土文献研究会」や中国(北京)で開催された「簡帛文字与書法学術研討会」(主催 清華大学出土文献研究与保護中心・中国文化遺産研究院古文献研究室)などで報告するとともに、論文として日本や中国の学術誌に発表し、国内外へ広く発信することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画にもとづき「戦国簡牘文字の多様性」・「秦の文字統一における形体変化」の2つの観点を踏まえて調査・分析を行う。 「戦国簡牘文字の多様性」については、とくに地域差の観点から重視される清華大学蔵戦国竹簡『良臣』・『祝辞』を取り上げる。また「秦の文字統一における形体変化」については、今年度に刊行が予定されている北京大学蔵西漢竹書『蒼頡篇』を中心に検討を進める。さらに新たに公表された新資料についても可能な限り検討の対象に加え、戦国から秦漢にかけての簡牘文字の実態と変遷の過程を明らかにしていく。 これらの検討を通して得られた成果は、学会や研究会などで報告するとともに、論文として発表する。また海外の研究者との学術交流も積極的に推進していく。
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Causes of Carryover |
購入を予定していた図書の出版が遅れたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額42,690円は消耗品費に組み入れ、昨年度予定していた図書の購入費にあてる。それ以外の使用計画に変更はない。
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