2013 Fiscal Year Research-status Report
モンゴル系の危機言語、保安語積石山方言にかんする調査研究
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24520469
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
佐藤 暢治 広島大学, 北京研究センター, 教授 (90263657)
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Keywords | モンゴル系言語 / 保安語 / 危機言語 |
Research Abstract |
本研究の目的は、甘粛省臨夏回族自治州積石山保安族東郷族撒拉族自治県大河家鎮に暮らす保安族16,505人が話すモンゴル系の危機言語、保安語積石山方言にかんして以下の三点を明らかにすることにある。一つ目は保安語積石山方言の全体像をフィールド調査を通じて社会的・文化的背景とともに記録し、その調査結果を公刊すること。二つ目は、得られた成果を現地社会へ還元し、保安族の人々との連携のもと、当該言語における次世代への継承に協力すること。三つ目は、モンゴル系諸言語の歴史研究、言語接触研究に貢献することである。 平成25年度の主要な成果は、次の二点である。一つ目は、日本言語学会第147回大会で口頭発表をした、保安語積石山方言が持つ一人称複数代名詞における包括形と除外形の区別に関わることである。保安語積石山方言における包括形と除外形の使い分けは必ずしも話し手側に聞き手を含む含まないという教科書的なものではなく、話し手が属する恒常的な集団の場合、聞き手を集団外の対象と見なし包括形が使われることもあること、親族名詞は包括形と除外形の属格形式とは通常共起しないことが明らかになった。また、保安語積石山方言の包括形と除外形がモンゴル祖語のそれらと逆転した関係にあることについては、包括形と除外形の区別が消滅したとき、包括形は中立的な意味で、除外形はその属格形式等が「話し手が属する恒常的な集団」と意味で残り、それが包括形への変化し、逆転が起こったことを明らかにした。 二つ目は、「保安語漢語辞典」の作成についてである。この辞典はピイイン式のローマ字表記に基づくものであり、従来から保安族の馬沛霆と作成に取り組んでいるものである。今年度もこれまでどこにも記録されていない語彙を収録することができ、現在総語彙2300語余りが採録されている。公刊に向けて最終的な段階を迎えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成25年度は中国側の事情により、フィールド調査ができなかったことが研究にやや遅れが生じた大きな原因になっている。 しかし、その他の点、「保安語漢語辞書」の作成、保安語にかかわる研究そのものについての遅れはない。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、本研究の最終年度である。今年度はフィールド調査ができるように準備を進めている。 「保安語漢語辞書」の作成は最終段階を迎えており、中国側からの最終判断を受けて、公刊したいと考えている。 また、保安語の歴史研究、モンゴル語の歴史研究に貢献できる論文を準備している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
中国の甘粛省臨夏回族自治州積石山保安族東郷族撒拉族自治県でのフィールド調査と「保安語漢語辞典」作成に関して、効率的に使う方が、研究の遂行上、また研究成果においてもより大きな成果をあげることができると判断したため。 中国の甘粛省臨夏回族自治州積石山保安族東郷族撒拉族自治県でのフィールド調査、「保安語漢語辞典」の作成、さらには研究遂行の上、特に保安語の歴史研究において重要な役割を担うと考えられるモンゴル系の他の諸言語の研究に費用を充てる予定である。
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