2012 Fiscal Year Research-status Report
日露語における「自然な言い回し」について:アスペクト・ヴォイスの認知類型論的研究
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24520472
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
副島 健作 東北大学, 高等教育開発推進センター, 准教授 (60347135)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | アスペクト・ヴォイス / 言語の「自然さ」,「~語らしさ」 / 日露語対照研究 / 認知類型論 / パラレルコーパス |
Research Abstract |
本研究は,言語の「自然さ」,「~語らしさ」ということはどういうことかについて理論化し,説明を試みるものである。すなわち,客観世界に対する事態認識の言語化および構文間の連関と対立の関係に反映される話者の事態認知上のカテゴリー化の動機づけを明らかにする。 研究方法は,1) 文献資料からの用例収集; 2) パラレルコーパスからの用例収集; 3) 母語話者への聞き取りによる用例収集; 4) 収集したデータの分析と意味地図の記述; 5) 母語話者への使用意識調査; 6) 認知様式や伝達慣習との関連性の分析・検証,の6段階の手続きによって行う。パラレルコーパス(対訳コーパス)とは,複数言語について,特に,意味内容がほぼ等しいと考えられる文について対応関係が付いているコーパスである。本研究では日本語は主体結果構文(シテイル),受動構文(サレル),客体結果構文(シテアル),ロシア語は受動構文 (быть + V-н-/-т-),不定人称構文 (主語がなく,動詞は3人称複数形) の構文について調査を展開することを予定している。 当該年度に実施した研究成果 ①パラレルコーパスの電子化および用例収集: 書きことばを中心にロシアや日本の近代から現代にかけての文学作品のうち,短編小説を中心にまずは日本語からロシア語へ翻訳されたものを選定し,6作品についてすでに電子化した。 ②母語話者への聞きとり: 日本在住のロシア語母語話者を対象に聞き取り調査を実施し,関連する構文を収集した。調査は,設定した状況を分かりやすく提示しつつ,母語でどのように表現するか答えてもらう形で行なった。 ③データベース化: パラレルコーパスなどの収集したデータは,意味内容がほぼ等しいと考えられる文に対応関係を「タグ付け」し,必要に応じて検索・利用できる形でデータベース化することを検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は,アスペクトとヴォイスという2つの範疇を統合的に眺め,機能意味論的な観点からロシア語と日本語を解析し,普遍性と可変性の検証を進めようとするものである。そのため,①ロシア語と日本語のパラレルコーパスの電子化と用例収集;②ロシア語母語話者への聞き取りによる用例収集;③収集したデータのデータベース化;④各言語の母語話者100名ずつ(計200名)の使用意識調査,を研究目的の達成のために行う予定である。 このうち当該年度では①,②,③を実施した。パラレルコーパスについては,日本語からロシア語へ翻訳された短編小説6作品の電子化を行った。また,ロシア語母語話者への聞き取り調査では100例近くのロシア語の用例を収集できた。 パラレルコーパスの作成にあたっては,ロシア語から日本語へ翻訳された作品についてはまだ着手していない。また,ロシア語母語話者への聞き取りは他の対象者へも行い,一般的な表現と個人差による表現とを考慮に入れていかなければならない。こうしたデータの収集は継続して行なっていく予定であり,次年度の計画である映画やテレビドラマ,アニメなどの話し言葉からの用例収集と同時進行で行なうことは可能である。 このように,本課題研究はおおむね順調に進展しており,このままいけば予定通り研究目的を達成できると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
① パラレルコーパスの電子化および用例収集 1年目に引き続いて用例を収集する。当該年度は話しことばを中心に,映画やテレビドラマ,アニメなどとその吹き替え(または字幕)のパラレルコーパスを選定し,電子化するとともに,関連する構文を数多く収集し,蓄積する。 ② 調査結果の分析・記述 収集した用例を分析し,その表現形態と意味的特徴,単一言語内における多機能的拡張のありかたや両言語間の描写の違いなどについて詳しく分析し,両言語のアスペクト・ヴォイスの現象の特徴をまとめる。それと同時に,分析結果をアスペクトとヴォイスを統合的にとらえた「意味地図」にまとめ,普遍的な拡張の方向を明示する。 ③ 母語話者への使用意識調査 収集した用例の分析により,ロシア語と日本語との間で表現のズレが顕著であった場面をリストアップし,その場面においてどのような表現を用いたらいいかを,ロシア語と日本語の母語話者にアンケート調査する(30項目程度)。その結果をもとに,同一事象の描写の仕方の差異と言語間による事態の捉え方の違いとの関係について検証する。調査は日本語母語話者(仙台在住の大学生(東北大学))とロシア語母語話者(ロシア在住の大学生(サンクトペテルブルク国立大学))各100名ずつを対象に行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究の目的は,未だ研究の蓄積が脆弱な状況であると言える言語の「自然さ」,「~語らしさ」ということはどういうことかについて明らかにすることにある。そのため,日本語およびロシア語においてアスペクト,ヴォイスの両範疇にまたがる構文の形式と意味の関係はどうなっているか,また言語間でどのような構文の分布パターンが見られるかを検証していく。研究目的の達成のため,次年度においてもひきつづき次の4点を実施する。 ①ロシア語と日本語のパラレルコーパスの電子化と用例収集;②ロシア語母語話者への聞き取りによる用例収集;③収集したデータのデータベース化;④各言語の母語話者100名ずつ(計200名)の使用意識調査 これらの実施にさいしての研究費の使用計画は次のとおりである。①にかんしては,パラレルコーパスとなる図書(文学作品)やDVD(映画)などの購入と電子化の作業費が必要となる。②にかんしては,聞き取り調査時に絵や動画などで場面や状況を提示するためのノートPCと,対象者への謝礼が必要となる。③にかんしてはデータベース化のためのPCおよびデータ化の作業の費用が必要である。また,収集したデータを保存し管理するためのハードウェア等も必要である。④にかんしては,アンケートの調査票作成のための諸経費,母語話者200名にたいする謝礼と,ロシア語母語話者への調査については調査に赴くためのロシアへの渡航費用が必要である。②と④の調査では,対象者に気持ちよく協力してもらい,より妥当性の高い結果が得られるよう,商品券を謝礼として提供する。
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Research Products
(2 results)