2012 Fiscal Year Research-status Report
拡大する日本語デジタルコミュニケーションに関する社会言語学研究-高齢化を視野に
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24520479
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Toyo Gakuen University |
Principal Investigator |
西村 由起子 東洋学園大学, 人文学部, 教授 (70198513)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | コンピュータコミュニケーション / 高齢化 / ブログ / バリエーション / 言語イデオロギー / ユーモア |
Research Abstract |
本研究は、近年ますます広範囲に普及しているデジタルコミュニケーションと、世界的にもその重要性が認識されている高齢化が相互に組み合わさり、社会にどのようなインパクトを及ぼすかを、国際的視点を意識しながら社会言語学的に解明することを目的としている。具体的には、今年度は以下の3点を主に実施した。 1)高齢化社会に即したオンライン日本語バリエーションを解明するため、これまで対象としてこなかったジャンルである、年代別「ブログ」から、高齢者(60歳代以上)と若者(20・30歳代)の年代の異なる書き手によるブログ分析のための事前調査において、まず分析対象とするブログサイトを選定し、文献調査も平行して行った。そしてパイロットデータに基づく研究発表を行った。 2)日本語CMCから観察可能な言語イデオロギーの解明については、emoticonsに焦点を当て、英語圏での言語イデオロギー研究と国際比較可能な形で比較・発展させる形で日本語CMCの技術的環境も考慮して分析するため、文献調査も含め、予備調査を行った。この段階で、ケータイメールだけでなく、若者によるブログがスマートフォンから多く発信されていることが明らかとなりブログに出現したemoticonsも言語イデオロギー分析の対象とすることとした。 3)英語圏で発展してきたユーモア理論の適用可能性を検証するため、オンライン日本語研究から誤変換に見られる日本語文化圏でのユーモアについて国際発信を行った。 上記の具体的実践として、本年度は学会発表4件、論文発表1件を行った。1)に関して、スペインで開催された国際コーパス学会において、ブログデータを含めた日本語バリエーションについて発表し、欧米研究者に向け、発信した。2)に関しては、次年度開催予定の国際学会で発表が採択された。3)に関しては論文1発表し学会発表を2件行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度における本研究達成度としては順調に進展しており唯一やや遅れている部分があるとすると、ケータイメールデータの収集・分析であるが、言語イデオロギーを分析するためのデータとしては、必ずしもケータイメールによらずとも、ケータイ器機であるスマートフォンから執筆されたブログも利用可能であることが判明した。特に、ケータイと比較して、使用されるようになってから日の浅いスマートフォンについては、昨今利用が急増しているのにもかかわらず、スマートフォン利用による言語分析研究は蓄積がない。この意味でスマートフォンによるブログ分析は意味のあるものと考えられる。ケータイによる個人宛メールとスマートフォンによるブログの違いはあるが、ブログも特定の読者に向けて執筆・公開されている事があり、特に技術的プラットフォームがケータイからスマートフォンに移行しているとするなら、その差を考慮して本研究を進めることは、予想以上の進展、と見ることも可能であるが、当初の計画に照らすとスマートフォンによるメール収集・分析が課題となる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、本年度において明らかにされた事柄をふまえ、ブログにおけるemoticonの利用がどのような意味を持つか、言語イデオロギーとアイデンティティ構築の視点から分析を行う。さらに、日本語CMCに見られるユーモアに関して、ブログからもデータをとり、特に高齢者によるブログにおいて、ユーモアがトピックとなっている場合があり、その議論の展開から、年代とジェンターの関わりを明らかにする。 今年度課題となっているスマートフォンによるメール収集・分析の実施について、次年度中に具体的に調査を実施できるよう、周囲の状況を改善する予定である。情報提供者の確保について、困難は予想されるが、確保できるよう工夫をし、データ収集につなげたい。 次年度においては、国際学会において3件発表予定があり,国際発信をさらに続ける計画である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度1万円あまりの研究費が次年度以降に使用されることとなったが、これは文献資料収集のタイミングによるもので、次年度には図書・文献費として使用される予定である。
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