2013 Fiscal Year Research-status Report
拡大する日本語デジタルコミュニケーションに関する社会言語学研究-高齢化を視野に
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24520479
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Research Institution | Toyo Gakuen University |
Principal Investigator |
西村 由起子 東洋学園大学, 人間科学部, 教授 (70198513)
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Keywords | デジタルコミュニケーション / 高齢者 / 日本語 / ブログ / ユーモア / 年代別バリエーション / 言語イデオロギー / アイデンティティ |
Research Abstract |
本研究は、拡大する日本語デジタルコミュニケーションと、世界的にもその重要性が認識されている高齢化が相互に組み合わさり社会にどのようなインパクトを及ぼすかを、国際的な視点をもって社会言語学的に解明することを目的とし、この全体目的を4つに分けている。まず第1の「高齢化社会に即したオンライン日本語バリエーションの解明」では、年代別/男女別ブログの分析から、文法特徴に加え、語彙特徴分析ツールも用いて比較を行い、この結果をノルウェーでの国際学会において発表した。2点目の「日本語CMCから観察可能な言語イデオロギーの解明」に関しては、「かわいい」を巡るイデオロギーがブログ著者のアイデンティティとともに、文字列内に置かれる絵文字の使用として表出している現象について論じた。3点目の「インポライトネスの分析」に関しては、次年度に開催される国際学会で発表予定となっている。最後の「オンライン日本語研究から日本語文化圏でのユーモアの特質」については、高齢者ブログから、共感の笑いを誘う「自己卑下的ユーモア」が特徴的であることを論じ、「和をもって尊しとなす」という日本文化の特徴的一面と一致していることを論じ、アメリカでの国際学会にて発表した。 日本語CMCの年代別バリーションは、若年世代に偏った研究方向を是正する他国では見られない研究で、高齢化がますます進行する現代社会における重要な問題を扱っている。デジタルシニアと呼ばれる層によるブログではあっても、高齢化から来る困難点、パソコンの扱いや、テクノロジーに対する向き合い方などの点で、60代以上と若手世代のブログ著者とは異なった様相が明らかになり、この点をとらえた本研究はこれまで分析対象としてこなかった年代に焦点を当てた点、及び、国際的にも見られない研究である,という点から重要であると言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記に述べた4つの項目中、インポライトネスに関する部分が他の項目と比べてやや遅れているが,次年度に成果発表がみこまれるので、全体としては,おおむね順調な進展状況と言える。
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Strategy for Future Research Activity |
第1の推進方向として、インポライトネスに関する部分を進展させることがまず課題となる。このことは、インポライトなやりとりがオンライン環境では「おかしさ」につながり、ここからユーモア理論との接点を見いだすことができる点を論じる予定である。第2には、ブログ分析の理論的背景として、ブログがフィクションの要素を持つことから「役割語」の概念を導入し、このことから、ブログ著者が各自のアイデンティティを構築していることを論じる予定である。
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