2012 Fiscal Year Research-status Report
九州方言における条件表現の体系性に関する実証的研究
Project/Area Number |
24520482
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Osaka Shoin Women's University |
Principal Investigator |
中田 節子(有田節子) 大阪樟蔭女子大学, 学芸学部, 教授 (70263994)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
江口 正 福岡大学, 人文学部, 教授 (20264707)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 条件表現 / 九州方言 / ギ / 方言文法 / 既定性 / 仮定性 |
Research Abstract |
本研究は九州方言の条件形式の分布的特徴を明らかにし、方言特有の言語形式と共通語と同様の言語形式との間で世代差や共通語化においてどのような違いがあるのかを検証することを目的とする。多くの言語において仮定性の高さが文法的に標示されるのに対し、日本語共通語では、仮定性の高さよりも、事態の真偽が定まっていること、その定まった真偽を話し手が知らないことが条件形式で明示されるという特徴がある。この研究ではこうした共通語の特徴が、九州方言の方言固有の条件形式において一層顕著になることを示し、日本語方言文法研究から条件文の言語学的研究に寄与することを目指す。 一年目である平成24年度には、まず、これまで予備的に行ってきた佐賀市方言の条件表現に関する本格的な調査を開始した。条件節の述語の意味タイプ、主節のモダリティ、さらに条件節と主節の時間関係を考慮した調査項目を作成し、調査に臨んだ。この地域は共通語にはない「ギ」という条件形式の使用が優勢だが、この地域に隣接していながらギを用いず、専らナラ形式を用いる(共通語では用いない範囲においても)城島町においても同様の調査項目で調査を行った。両地域の調査結果を分析し、その成果を九州方言研究会および日本方言研究会で発表した。 つぎに、佐賀市以外の地域でギ形式が用いられている地域およびその隣接地域での調査にも着手した。ギを用いる地域として、天草市と甑島の里村地区の調査を行った。いずれの地域も、佐賀のようにギが優先的に用いられるわけではないが、ギが選ばれる用法があることが明らかになった。隣接する地域として熊本市において調査したが、ギに近い表現として「シャガ」の使用が見られ、興味深いデータが得られた。 さらに、代表者のこれまでの日本語の条件表現研究の成果をイタリア日本語教育協会で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初計画では、佐賀およびその隣接地域での調査を中心に行い、ギを用いる他地域に関しては、調査の準備を整えるにとどめていたが、甑島方言の調査チームの1人に協力をあおいだ結果、甑島での調査が実現し、しかも、ギおよび他の形式の使用について興味深いデータが得られた。また、熊本市方言において、ト形式に後続するシャガが、ギに近い働きをしている可能性があることを示すデータも得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
二年目の平成25年度は、佐賀市以外でギ形式が使われている地域での調査をさらに進める。諫早市、出水市で、新たに調査をし、さらに、甑島、天草市でもさらに調査を行う予定である。形態音韻論的な調査から始め、アクセント、プロミネンスなど音調的特徴にも十分留意し、佐賀市地域での調査と同様の調査文を用いる。それに加え、条件形式が多く出るようにコントロールした「テーマを決めた談話やロールプレイ」なども組み合わせる。 ただし、その方言において基本的な条件形式として用いられているかどうか現段階では必ずしも確かではないので、条件以外の用法についても逃さないようにする。そのためにも自然談話を長めに録音するようにする。その際、自然談話で得られたデータの中に条件的ではない「ぎ」あるいは「そいぎ」のような熟語的な「が」があった場合には、追加的な調査が必要となることを考慮しておく。 これに加え、諫早市・出水市に近接するギを用いない地域の調査も行う。この地域についても、これまでと同様の調査文を用いるが、自然談話を長めに録音するようにし、条件以外の用法についての現象も同時に観察しておく。 さらに、それまで調査してきた地域を含めた広域でのアンケート調査の準備をする。前年度から当該年度にかけて調査した結果とその分析が十分に広域アンケート調査に反映されるようにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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