2013 Fiscal Year Research-status Report
ネパールのメチェ語の文法記述分析・ドキュメンテーションとボド語西部方言の調査研究
Project/Area Number |
24520485
|
Research Institution | Mimasaka University |
Principal Investigator |
桐生 和幸 美作大学, 生活科学部, 教授 (30310824)
|
Keywords | ドキュメンテーション / 格標示体系 / 自他交替 |
Research Abstract |
本年度は、25年度に記録した音声データ(個人談話、グループ会話、bathou religion 、メチェの衣装、結婚のプロセス(総時間約3時間)をELANを用いて電子データ化の作業を行った。また、さらに3月にDaijhan村において、新たに物語2編と個人インタビュー1編、グループ会話を1編録音し、現在、ELANで電子化を行っている。これまでテキストデータがない言語のコーパスデータを積み上げることができた。 本年度は、上記の録音データのテキストコーパス化とともに、文法的な分析も行った。一つは、自動詞他動詞の形態的な特徴についての分析を行った。2012年に科研費の研究成果として出版したメチェ語辞典のデータから全動詞を抽出し、自他の形態的な特徴を分析した。メチェ語では、1)自他の形態的派生関係として反使役化は存在せず、使役化、両極化、両用(自他同形)が認められる、2)一部の変化動詞では、無標の自動詞を中心に、g系接頭辞による形容詞への派生、p系接頭辞による使役動詞への派生という連続性を認められた。これは、特に自他動詞の派生において類型的な観点から興味深い。 また、自他動詞の調査から、メチェ語の格標示のパターンについて新たな発見があった。メチェ語は、主格対格型の格表示であるが、格表示は常に義務的ではない。しかし、ある環境において義務的になることがある。分析によって、これまでわかっていた名詞の定性、ディスコースにおけるプロミネンスに加え、他動詞の場合、主語と目的語の名詞句階層(代名詞>生物>無生物)における違いによって、定性やプロミネンスに関係なく格標示が義務的になることが分かった。基本的に、主語が目的語よりも階層上低い参加者である場合、主格が義務的である。チベット=ビルマ系言語では、格標示が義務的でないものも多いが、その分布パターンの分析に示唆的な結果となった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ドキュメンテーションのペースは、ほぼ予定通り進んでいる。また、文法項目の調査分析は、今年度予定していた名詞化節について行ったが、それより先に予定していなかった自他動詞の対応関係、格標示のパターンについての分析が先になり、名詞化節の分析は途中である。また、本年度予定してたネパール内および西ベンガル州内のメチェ・ボド語の語彙調査を協力者の都合により、予定の規模で実施することができなかった。今後、夏に再度調査を行えなかった地域での調査が可能か検討する。
|
Strategy for Future Research Activity |
26年度は最終年度で、成果の取りまとめを行う。特に、ドキュメンテーションとして分析済みでないものも含めてアーカイブ化を行う予定である。ELANにて分析のできたものは、ウェブ上で公開する方向でコーパス化を進める。また、25年度に得られた分析結果を論文1編と学会発表で成果公開を行う予定である。
|