2014 Fiscal Year Research-status Report
カイケ語の記述調査、及びチベット語との言語接触を中心とする歴史言語学的研究
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24520486
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Research Institution | Nagoya College |
Principal Investigator |
本田 伊早夫 名古屋短期大学, 英語コミュニケーション学科, 教授 (10269681)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 歴史言語学 / チベット=ビルマ諸語 / カイケ語 / チベット語 / 言語系統 / 言語接触 / タマン諸語 / ヒマラヤ諸語 |
Outline of Annual Research Achievements |
26年度は、2014.8月ー9月にかけての約20日間、イギリスにおいてカイケ語及びチベット語ティチュロン方言の聞き取り調査を調査協力者の協力を得て実施し、得られたデータの分析を現地滞在中及び帰国後に進めた(なお、調査をイギリスで実施したのは、ネパール人である調査協力者が自身の都合により約半年間イギリスに滞在することとなった為である)。調査内容とその成果は以下の通り;(1)カイケ語の文法に関し、未だ調査が不十分な項目(特に、格標示接辞の使用、使役構文、名詞化と関係節、動詞につく時制・アスペクト・法などを表す接辞など)について更に調査を進めると共に、矛盾点を解決すべく更に文例やテキストの収集とその分析にあたった;(2)チベット語ティチュロン方言について、語彙収集、動詞の活用における語形・接辞の形態およびその変化についてのデータ収集、音韻・音調に関するデータの収集と分析を更に進めた。現地調査から帰国後は;(1)持ち帰った言語データの整理・分析に努め、カイケ語とチベット語ティチュロン方言の記述と分析を進めた;(2)ネパール・ヒマラヤ地域における他の現代チベット語方言についての先行研究を調査・分析すると共に、チベット・ビルマ語系非チベット語との間の系統関係の分析と言語接触の状況を調査した;(3)カイケ語、タマン諸語、チベット語との間の系統関係及び言語接触の状況を分析する中で、これまでのタマン諸語文法に関する調査・分析が不十分であり、更なる調査が必要であると判断される文法項目がいくつか発見された為、いくつかのタマン諸語・方言について、現地母語話者とメール等のやり取りを行い、これまで得ていたデータの確認や新しいデータ収集と分析を行った;(4)これまでの調査と研究に基づいた研究成果の発表に向け、論文作成及びその準備に従事した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1 これまで本研究者によるカイケ語とチベット語ティチュロン方言についての調査に全面協力してくれていた第一の調査協力者に不慮の事情が生じ、約半年間イギリスに滞在することとなった。夏の調査については何とか都合をつけてもらい、イギリスにおいて調査を行うことができたが、年末年始に予定していた調査は、この期間のちょうど中間に第一調査協力者が本国ネパールに帰国するタイミングとなってしまい、イギリス、ネパール、どちらへの出張調査も日数不足で生産的でないと判断された為、取りやめることとした。 2 上記の事態が発生したこともあり、本研究成果発表の為国際学会への参加に研究費を使用することを計画したが、チベット=ビルマ語系言語に関する国際学会2つのいずれもが、本研究者が(本務校における業務などの関係で)出張できない日程となってしまった為、やむなく参加を断念した。 (上記の理由により、今回、この研究の期間延長承認申請を行い、承認された。) これらの事情により、調査の進捗に遅れを見ることとなったが、調査内容を若干修正すると共に、メールや郵送といった通信手段を使うなど、調査方法にも最大限工夫を凝らしたことにより、遅れを挽回することもでき、また、当初予想していなかった成果を得ることもできた。
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Strategy for Future Research Activity |
26年度末に提出し承認された「補助事業期間延長承認申請書」に記載した通り、26年度に予定していたが実施できなかった分の、現地ネパール・カトマンズにおいてのカイケ語及びチベット語ティチュロン方言に関する聞き取り調査を実施する予定である。今年度に入りネパールにおいて大地震という不慮の事態が発生したことに伴い、慎重に事態を見極めてきたが、予定している調査協力者自身には大きな問題はなく、現在のところ、年度内に現地での調査が可能と判断している。ただし、調査時期としていつが最も適切かは未だ検討中である。現地調査では、(1)カイケ語の文法に関して、未だ調査が不十分な項目について更に調査を進める;(2)チベット語ティチュロン方言について、語彙収集、動詞の活用における語形・接辞の形態およびその変化についてのデータ収集・確認、音韻・音調に関するデータの収集・確認と分析を更に進める計画である。現地調査から帰国後は、持ち帰った言語データの整理・分析に努め、カイケ語とチベット語ティチュロン方言の記述と分析を更に進めていく計画である。 また、これも26年度に予定していたが叶わなかった国際学会での研究発表を行う。すでに、8月に実施される「第48回シナ=チベット言語学会」から本研究者の研究発表要旨が受諾されており、本学会への参加を予定している。 更に、本年度の調査から得られたデータとその分析に基づき、次年度28年度に国際学会にて研究発表すべく準備をしていく所存である。
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Causes of Carryover |
調査協力者に不慮の事情が生じ、予定していた期間(2014年12月-2015年1月)に調査協力が得られなくなった。これにより、予定していたネパールへの調査出張を取りやめた為。また、この事態に対応し、本研究成果発表の為国際学会への参加に研究費を使用することを計画したが、チベット=ビルマ語系言語に関する国際学会2つのいずれもが、本研究者が(本務校における業務などの関係で)出張できない日程となってしまった為、やむなく参加を断念した(上記の理由により、今回、この研究の期間延長承認申請を行い、承認された)。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
26年度末に提出し承認された「期間延長承認申請書」に記載した通り、26年度に予定していたが実施できなかった分の、現地ネパールでの母語話者への聞き取り調査を実施する予定である。今年度に入りネパールにおいて大地震という不慮の事態が発生したことに伴い、慎重に事態を見極めてきたが、予定している調査協力者自身には大きな問題はなく、現在のところ、年度内に現地での調査が可能と判断している。ただし、調査予定地であるカトマンズはかなり長期にわたって混乱が続くと予想される為、調査時期としていつが最も適切か未だ検討中である。 また、これも26年度に予定していたが叶わなかった国際学会での研究発表を行う。すでに、8月に実施される「第48回シナ=チベット言語学会」から本研究者の研究発表要旨が受諾されており、本学会への参加を予定している。
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