2014 Fiscal Year Annual Research Report
ネイティブ不在地域で発生した新型接触言語―「アンガウル島日本語」の調査研究―
Project/Area Number |
24520502
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
DANIEL Long 首都大学東京, 人文科学研究科(研究院), 教授 (00247884)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小西 潤子 沖縄県立芸術大学, 音楽学部, 教授 (70332690)
今村 圭介 長崎大学, 多文化社会学部, 戦略職員 (00732679)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 言語接触 / 残存日本語 / 公用語 / 借用語 / 日本語習得 / 旧南洋庁 / 社会言語学 / 言語変化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究でアンガウル島を中心にパラオ国で使われている日本語の特徴やその使用環境、使用状況を明らかにしようとしている。今年度は2回におよぶ現地調査を行なった。2014年9月は9日から14日までで、2015年3月は19日から25日のほぼ2週間だった。パラオの日本語をはいくつかの観点から分析している。 一つはアンガウル州の州憲法において日本語が公用語の一つとして挙がっている点である。日本国憲法にすら日本語は公用語として定める文言がないので、これは世界唯一のところである。長崎大学の今村圭介と連名で刊行した「日本語が公用語として定められている世界唯一の憲法―パラオ共和国アンガウル州憲法―」(『人文学報』503号79-102頁)でこれを解説している。新たな聞き取り調査を3月に行なっているので、続編も出す予定である。 もう一つの課題はパラオ語で使われる日本語起源借用語である。これまで531語の使用状況について調べているが、去年秋には新たに349語について調査をした。結果を斎藤敬太および元パラオ教育省の Masaharu Tmodrangと連名で「パラオ語で使われている日本語起源借用語」(『人文学報』503号79-102頁)で公表した。 本科研費の主な目的である、アンガウル島の接触言語の分析を現在も続けている。今村圭介と一緒に「パラオ国アンガウル島における日本語使用」(仮題)でその特徴や理論的位置づけについて検討しているが、近いうちに学会誌に投稿する予定だ。アンガウル島で話されている日本語は、これまでの「ピジン」とも「クレオール」とも「準クレオール(creoloid)」のいずれと異なる。creoloidは「文法的再構築の程度が軽いクレオール」であるように、アンガウル日本語は「文法的単純化の程度が軽いピジン」に当たると見ているので、pidginoid(準ピジン)という概念を提唱して分析を行っている。
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Research Products
(4 results)