2014 Fiscal Year Research-status Report
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24520503
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Research Institution | Aichi Prefectural University |
Principal Investigator |
犬飼 隆 愛知県立大学, 情報科学部, 客員共同研究員 (20122997)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金森 康和 愛知県立大学, 情報科学部, 准教授 (50230868)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 名古屋弁 / 方言絵葉書 / 変母音 / 音声認識 / 風俗 / 日常生活 |
Outline of Annual Research Achievements |
「名古屋言葉絵葉書」にかかれた方言を解読し良好な読み上げ音声を録音し、成果を教育や介護現場の回想法に生かすことが事業の目的である。現存する三十数枚について昨年度までにひととおりの解読と書かれた言葉の音声化・録音を終えた。 解読においては、前年度までに名古屋市大須界隈の様子であることが明確になっていたが、書かれた台詞、描かれた絵柄ともに、より古い大正時代の要素を反映していることが明瞭になった。袋に入れられた四枚一組ごとにそれぞれテーマが設定されていることもわかった。刊行時期は昭和5~6年頃と従来は推定されていたが、昭和2年消印のものが発見されたことと、上記の実情からみて、さらにさかのぼる頃から刊行され始めていたと見られる。 音響研究においては、読み上げたものを良好な状態で録音する事業がほぼ完成し、その整理・分析をすすめた。また、「名古屋弁音声認識システム」の構築をめざして「名古屋弁度」の知覚実験をすすめたが、高年齢層と若い層との知覚が相違することが明らかになった。若年層は、伝統的な変母音の持続音よりも、冒頭に口蓋化をもつ変母音を名古屋弁らしい音声と知覚するのである。年齢別では50歳台話者の音声を名古屋弁らしいと聞く傾向がある。この結果は方言音声の変化の動向を考える上で示唆的である。 これまでの成果を平成27年1月17日に「講演とシンポジウム『名古屋言葉絵葉書の魅力』」を開催して公表した。報告は、研究協力者井上善博(名古屋市博物館:当時)「名古屋言葉絵葉書の魅力、分担者金森康和「名古屋弁の音響特徴」、代表者犬飼隆「四コマの物語とその継承」。参加者が多く、その反響によって新たに有力な協力者を得ることもできた。研究事業をまとめて、利用できるようにして行く条件が整った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現存する三十数枚の「名古屋言葉絵葉書」に関してひととおりの解読と台詞の読み上げ録音を達成できたので、事業の根幹部は順調にすすんだといえる。「おおむね」とする理由は以下のとおり。 解読においてなお確かめたい事柄がある。とくに絵柄の詳しい考察が必要である。刊行時期についても大正期までさかのぼる可能性が出てきたこと、また三十数枚が刊行された順と同じ内容のものが再刊された事情も再考を要する。 録音資料の整理・分析に考察をすすめる余地がある。また、「名古屋弁度」の知覚において、方言話者である代表者の感覚的な認識と多くの被験者を対象にした実験結果とにずれがあるという問題は今後の考察を要する。 研究成果の公表に関しては今年度は公的な学会発表論文公表がなく、研究者主催の講演・シンポジウムのみであった。教育現場や介護現場での利用方法の開発は今後の課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、ひととおり検討を終えた三十数枚について、四枚一組かつ類似の内容の再刊を考慮に入れながら解読しなおす。録音も適宜に採り直す。その作業を通じて、これまでの不備を補いながら新たに生じた問題に解を与えて行く。録音についても、整理・分析した結果をフィードバックする。それらをまとめて学会で発表する。最終的には名古屋弁音声認識システムの構築をめざす。年度末に研究成果報告書を作成して教育関係・介護関係に配布する準備を行う。予算はこれまで保留していた各項目をすべて執行する。
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Causes of Carryover |
主たる理由は、高額物品の購入を控えたことと、海外での学会発表が実現しなかったので旅費の執行が予定を下回ったことである。年度末に事業の延長を見越して成果報告書の刊行を見送ったので、その分の支出もなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
予定していた高額物品購入、学会発表のための旅費、成果報告書の刊行をすべて執行する。人件費・謝金は残額がちょうど今年度分に要する程度なので使い切る。
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