2012 Fiscal Year Research-status Report
程度修飾とアスペクト現象についてのスケール意味論的研究
Project/Area Number |
24520507
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Seitoku University |
Principal Investigator |
北原 博雄 聖徳大学, 人文学部, 准教授 (00337776)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | スケール / 程度副詞 / アスペクト / (非)段階性 |
Research Abstract |
本年度は現代日本語の程度副詞の分類を考えた。 まず状態の程度を修飾すると定義される程度副詞は、量的な側面も修飾する程度/量副詞と、そうすることができない状態程度副詞に二分される。両者の用法を観察することにより、副詞を修飾する例を除けば状態程度修飾は述語修飾だけだが量修飾は名詞句修飾も可能であること、程度/量副詞は状態程度副詞よりも被修飾句の種類が多いことなどを明らかにした。また、[XはYより述語]という比較構文に入るかどうかという点から程度副詞を考えると、常に比較構文に現れる程度副詞は「もっと」「ずっと」「はるかに」くらいしかないこと、状態程度副詞は(基本的には)比較構文に入らないこと、比較構文中での程度/量副詞は、状態程度修飾は可能だが量修飾では制限があることなどが指摘できる。 次に、近年盛んになってきたスケール意味論(scalar semantics)に基づいて、被修飾句のスケール構造(scalar structure)に基づいて程度副詞を分類し、最後に量修飾用法の有無と併せた程度副詞の分類案を示した。 この研究は、語句のスケール構造を考える場合の基礎となるものであり。ある語句がどのような程度副詞から修飾されうるかという点から、その語句のスケール構造を予測することができるからである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
近年の海外での研究成果と、過去に申請者に交付された科学研究費の研究成果を取り入れて、程度副詞の最新の分類案を論文にまとめることができた。しかし、本年度の達成目標の中で「かなり学者に {#なった/なってきた}」の適格性の違いについては論ずることができなかった。早急に論文にまとめたい。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、程度修飾は被修飾句のスケール構造に敏感だという仮定の下で行われるものである。今後の研究内容及びその推進方策は以下の通りである。 まず、程度副詞の用法の一つとして「かなり {*学者になった/学者になってきた}」のような例の適格性の違いについて考える。この例は、「した」と「してきた」のような文法的アスペクトの表現も程度修飾あるいは(非)段階性で説明できる可能性があることを示している。 次に、程度副詞の状態程度修飾用法と量修飾用法のメカニズムについて解明する。このメカニズムは、語を語彙分解して得られるroot、あるいは、Hale&Keyser流のL-syntaxや拡散形態論(Distiributive Morphology)で派生の出発点として得られるrootの(スケール構造を含む)意味的な性質で説明することができる。それで説明することができない例は、語用論レベルで解釈されるということになる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究は、国内ではあまり研究が進んでいない分野なので、海外での研究成果を利用するため、洋書が必要である。したがって、研究費は主に物品費に使用する予定である。また、研究成果を世に問うため、学会や研究会、講演などで発表する予定である。
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