2012 Fiscal Year Research-status Report
古代日本語述語形式における語彙と文法の交渉に関する研究
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24520512
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
仁科 明 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 准教授 (70326122)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 日本語史 / 日本語文法 |
Research Abstract |
申請時の予定では、今年度は古代語の「(さ)す」(と他動詞語尾との関係)と「つ」「ぬ」「ふ」といった文法形式を中心に扱っていく予定であり、前提となる理論的研究や先行研究の整理と、関係する現象についての用例の採取と整理をすすめ、研究の進展によっては、逐次、議論の活字化を進めていく予定でいた。 しかしながら、理論的研究を整理していく過程で、文法形式の意味変化(これは従来も考えてきたポイントである)について、もう少し考えを固めていく必要をおぼえたこと、本研究課題の前提の一つとなっている「(ら)る」に関する研究(「出来文」説への疑問をふくむ)について、「出来文」説の支持者の一人である川村大氏から批判を受け(「動詞ラル形述語文と無意志自動詞述語文との連続・不連続について」国語と国文学89-11/2012年11月)、その対応を検討する必要が生じたこと、の二点によって、当初の予定以上に、研究の基礎や前提の部分の考察に時間をかけることとなった。 「(ら)る」について自説の全面的な変更が必要であるかどうかについては今のところ結論が出ていないが、文法形式の意味変化については徐々に見通しを得ており、国立国語研究所共同研究プロジェクト「日本語文法の歴史的研究」の研究発表会(於:国立国語研究所2012年9月4日)において、成果の一部を利用した発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度については申請時の段階から、基礎作業(理論的研究や先行研究の収集と検討、用例の採取と整理)を中心にした研究を行う予定であったから、その意味では予定通りである、ともいえる。基礎作業の段階とはいえ、研究成果の公表(とくに論文化)は行っていくことを考えていた。 しかし、「研究実績の概要」欄にも記したような状況の変化により、研究の対象に多少変化が生じたこともあって、研究課題の前提部分の検討(自説の再考や理論的背景の考察)を、今年度の研究の中心とせざるをえなくなった。結果として、予定していた個々の文法形式に関する事実整理と検討を終わらせるまでには至らなかった。また、研究が進展した部分(文法形式の意味変化の過程に関する考察)に関しても、研究会などでの発表を行って議論を詰め、成果をブラッシュアップしている段階であって、いまだ研究を論文にまとめるには至っていない。 自説の再検討作業の過程で、別途考えがすすんだ部分があり、必ずしも研究が遅れているともいえないが、当初の研究計画からすれば、「やや遅れている」と判断することになるかと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
申請時の予定では、今年度(2012年度)中に個々の形式に関する基礎的な研究を固め、翌年度(2013年度)以降は、今年度の研究成果を、より大きな文脈に位置づけることを企図していた。だが、今年度は「研究実績の概要」欄、「現在までの達成度」欄にも記したような事情の変化によって、研究の前提部分に時間を取られることとなり、具体的な形式の検討を完成させるには至っていない。 そこで今年度は、1)今年度行った基礎的・前提的な部分に関する研究(特に文法形式の変化に関わる部分)について、さらに検討して自説を固め、成果を出していくこと、2)昨年度遅れている「受身」「使役」にかかわる述語形式(具体的には古代語の「(ら)る」「(さ)す」)および「完了」「継続」にかかわる述語形式(具体的には古代語の「つ」「ぬ」「ふ」「たり」「り」)について、記述・理論両面からの検討をすすめること、の二点を中心的な課題とし、研究を推進していくこととしたい。 このような研究計画では、申請時に予定していた、研究の「より大きな文脈への位置づけ」作業が少し遅れることとなるが、そのような研究には、今年度、遠回りして行ってきたような研究の前提への反省の活かせる部分が大きいと考える。2013年度、2014年度の研究によって、今年度生じた(多少の)遅れは、今後十分に取り戻せると考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
現況が生じた背景は、主に、(諸般の事情で)購入予定であった資料の一部が購入できなかったこと、私的な事情で、研究の執行計画に乱れが生じたこと(とくに旅費の執行がすすまなかった)、の二点によるものである。次年度以降には持ち越した資料の購入も行える見通しであり、翌年度分とあわせて使用して、研究をすすめていく予定である。
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Research Products
(1 results)