2013 Fiscal Year Research-status Report
古代日本語における「訓読」と「仮名の形成」の相関について
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24520513
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Research Institution | Kogakkan University |
Principal Investigator |
毛利 正守 皇學館大学, 文学部, 教授 (70140415)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
尾山 慎 奈良女子大学, その他部局等, 准教授 (20535116)
佐野 宏 京都大学, 人間・環境学研究科(研究院), 准教授 (50352224)
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Keywords | 日本古代語 / 倭文体 / 訓読 / 仮名 / 国語学 |
Research Abstract |
東アジア漢字圏に位置する古代日本においては、もともと、日本独自の文字を発明することなく、中国の漢字を用いることによって、書記するための日本語が始まらざるを得なかった。本研究は、仮借文字の仮名化を広義の訓読環境のもとでの文字属性の転換結果として位置づけ、中国語である漢語を使用しながら、それを訓読することによって日本語へと転換させていったことについて明らかにするものである。 今年度も中国の少数民族であるナシ族の言語規範の調査を行い、それぞれのアンケート調査から、書記者毎の傾向と書記間の傾向を分析し、標準的な仮借文字が認められるかどうかの検証を重ねた。アンケートは単語や平常文について小学生から年配層まで行った。そこから同じ膠着語であるナシ語と日本語における書記言語の規範をさぐり、古代の書記における日本語の研究を進めた。 古代日本において、漢字伝来当初、その漢字が中国語を書記するものであり、さらには日本語をも書記できるものだということを認識するに至るまでに相当の期間を要したと考えられる。その中で、中国の作品の内容等について、日本語の文字を持たなくて、また、訓読も進んでいない段階ではどのような伝達の方法があったかを推し量ることは難しいことである。しかし、倒置方式での書記と共に、日本語を目指した『古事記』の書記やその他の日本の古代史料を分析することによって、黎明期の日本語の解明を目指し、研究を進めた。 研究分担者の二名も、それぞれ萬葉集における仮名字母の標準化、仮名主体表記・訓字主体表記の歌巻の調査を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
中国における少数民族であるナシ族の固有言語であるナシ語の言語規範を援用して、古代日本語の書記について解明するための現地調査は、今年度も順調に進めることができ、収穫があった。 日本語の黎明期に中国から将来した漢語と日本語の相関関係の中から、訓読することによって、日本語を獲得していった形成過程を中国本土の漢民族の影響下にありながら、独自の言語規範をもつナシ語と比較対比させながら、古代日本語の書記過程の解明を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は最終研究年にあたるので、これまでの調査報告・研究会での成果を踏まえて、総合的な研究成果を纏める予定である。提唱する「倭文体」における訓読と仮名化の総合などについて、東アジア漢字圏のそれぞれの言語、特にナシ語の言語規範と比較検討し、提唱する自説の説得性を高めたい。また、日本語の黎明期に始まった漢文訓読という日本語の獲得方法について、古事記などの文章が、従来、変体漢文であると把握され、曲解されてきた面を再検証して、東アジア漢字圏の書記規範をも取り入れて、古事記、日本書紀、萬葉集のそれぞれの用字法及び文体の比較研究をおし進めたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究代表者は滞りなく、適正に研究費の支出を行ったが、研究分担者に残金が出たためである。研究分担者は、平成26年の最終研究年度における海外調査の参加も視野にいれているため、その費用等のために今年度は残金を出したという結果になった。 平成26年度、研究代表者とともに、研究分担者も中国雲南省でのナシ族の現地調査に参加し、本研究の集大成とすべく、渡航を考えているため。
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Research Products
(3 results)