2012 Fiscal Year Research-status Report
話者視点の統語的具現化から見たインターフェース研究
Project/Area Number |
24520525
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
金子 義明 東北大学, 文学研究科, 教授 (80161181)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 生成文法 / インターフェース / 話者視点 / 時制解釈 / 指標性 |
Research Abstract |
本研究は、生成文法のミニマリスト・プログラムの枠組みで、時制、モダリティー、話者指向の副詞表現等の指標性現象の中核概念である「話者の視点」の統語的具現化の考察を手がかりとして、統語論と他部門とのインターフェースの解明に寄与することを目的とする。具体的には、(1)話者の視点の統語的具現化メカニズムの解明、(2)談話機能の統語的具現化メカニズムの解明、(3)統語的具現化の観点による言語インターフェース理論の構築、の3点を目標とする。平成24年度は研究基盤年度とし、3つの目標の基礎的研究を行った。(1)については、Giorgi (2011)、Higginbotham (2009)、金子(2009, 2010)等の批判的検討を行った。(2)については、談話機能の統語的具現化の解明をめざすカートグラフィー理論に基づくHaegeman (2010, 2012)による一連の付加詞節の研究を批判的に検討し、金子 (2011)の提案の発展的展開の道を検討した。(3)については、Di Sciullo and Hill (2010)、Uriagereka (2012)等の批判的検討を中心に、言語インターフェース理論の基盤的整備を行った。併せて、文献の収集と整理、関連研究者との交流により情報収集を行った。以上の研究活動の成果として、金子 (2013)「英語における時制の内部素性とその分布特性について」を発表した。同論文では、英語の種々の定形節のTP主要部を構成する時制を、定形性素性[+/-finite]、直示的 [+/-deictic]、叙法素性([+indicative]、[+hypothetical]、等)の複合をとして捉える分析を提案した。その分析に基づき、話者の発話の時点と定形節の評価時EvT (evaluation time)の同定プロセスにおける統語特性の考察を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、3ヶ年の研究であり、平成24年度は研究基盤年度、平成25年度は研究拡充年度、平成26年度は研究総括年度と位置づけられている。研究基盤整備年度である平成24年度は、(1)話者の視点の統語的具現化メカニズムの解明、(2)談話機能の統語的具現化メカニズムの解明、(3)統語的具現化の観点による言語インターフェース理論の構築、の3つの目標の基礎的研究を行い、次年度以降の研究のための基盤整備を行った。その成果として、金子 (2013)としてまとめたが、定形節における評価時点の同定プロセスの考察を通して、話者の視点である発話時と評価時との同定と、上位節の事象時と評価時との同定における統語的相違が浮き彫りとなり、今後の研究のための基盤として重要な示唆を得ることができた。なお、平成24年度の研究では、名詞句の指示関係において話者の視点の働きに関して得られた知見が少なかったので、次年度以降、この点で研究を強化したい。以上から、平成24年度の研究に関しては概ね順調に進展しているものと判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
研究拡充年度である平成25年度は、24年度に整備された研究基盤を土台とし、新たな方向への研究拡充を行い、理論的基盤研究、個別テーマ研究、文献・研究情報の収集および整理を拡充する。 3つの目標ごとの具体的研究計画は次の通りである。(1)話者の視点の統語的具現化メカニズム解明の拡充研究については、前年度までの研究を継続するとともに、Depraetere (1996) 等の批判的検討により、関係節等の付加詞節における話者視点の統語的具現化メカニズムについて、付加詞節時制の評価時EvTの同定メカニズムにおける局所性等の問題を中心に研究を行う。(2)談話機能の統語的具現化メカニズム解明の拡充研究については、前年度までの研究を継続するとともに、Lopez (2009) およびPangiotidis (2010) 所収論文、カートグラフィー研究の最新の展開である Haegeman (2012)等の研究の批判的検討により、情報構造、聞き手の視点、主語視点の統語的具現化メカニズムの検討により研究を拡充する。(3)統語的具現化の観点による言語インターフェース理論構築の拡充研究については、前年度までの研究を継続するとともに、Folli and Ulbricht (eds.) (2011)、Bobaljik (2012)、Adger (2013)等の研究を批判的に検討し、統語部門と、意味部門、形態部門、音韻部門等とのインターフェース特性を考察する。 (1)、(2)、(3)に加えて、文献の収集と整理、人的交流による研究情報の収集を行う。文献情報、研究資料、研究成果の電子情報化を行う。平成26年度の研究総括へ向けての一定の見通しを得る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は、直接経費1,400,000円について、図書費等の物品費1,000,000、成果発表旅費等の旅費として220,000円、人件費80,000円、その他100,000円を予定している。おおよその内訳は以下の通りである。 (1)物品費:1,000,000(図書費(70冊程度)700,0000円、コンピュータソフト・メンテナンス・プリンタートナー等300,000円) (2)旅費:220,000円(成果発表旅費60,000円、調査研究旅費50,000円、研究打合せ旅費50,000円、招へい旅費60,000円) (3)人件費:80,000円(専門的知識の提供80,000円) (4)その他:100,000円(印刷費50,000円、通信費50,000円)
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Research Products
(1 results)