2013 Fiscal Year Research-status Report
創造的逸脱表現における文法と意味解釈のインターフェイス
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24520528
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
鈴木 亨 山形大学, 人文学部, 教授 (70216414)
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Keywords | 創造的逸脱表現 / 構文 / 文法 / 意味解釈 |
Research Abstract |
創造的逸脱事例として、2つの事例研究、すなわち「非選択目的語を伴う結果構文の意味解釈」と「活動自動詞に後続する形容詞の副詞的用法」を進めた。 いわゆる創造的な結果構文における非選択目的語の解釈は、4つの意味論的観点から構文としての一般化が可能であることを明らかにした。1つは、force dynamicsに基づき、行為者に起因する作用が他の参与者に伝達される場合、第一の受け手から第二の受け手まで二段階の作用の伝達がありうること、関連して2つ目には、作用伝達には「部分と全体」及び「図と地」という意味概念に基づく事態の把握が関与すること、3つ目に、語用論的解釈条件として、「世界知識」と「文脈情報」が動詞タイプにより異なる関与をすること、4つ目に、本来は言語表現としては実体化されない抽象的作用を具体的近接物によって代行し可視化する機能を持つ「代用目的語」の解釈である。文脈への依存度が高い比較的まれな事例であるとはいえ、この構文で自然な解釈が容易に得られるという事実は、文法理論として一般的説明を追求する価値のある言語事実であることを示している。 'Think different'というアップル社の有名な宣伝文句は、本来は'Think differently'の略式表現ではないかと考えられるが、この表現が完全に容認可能ではないにせよ、なぜ一般的に受け入れられるのか、その背景にある英語の形容詞と副詞の形態論上の対立や、可塑性の高い活動動詞の中でもとりわけ動詞thinkの意味論的特性に注目し、この表現がある種のミニ構文として成立する可能性について論じた。新奇な逸脱表現としての'Think different'は、英語の一般的な文法規則や構文、語彙特性などから直接的に認可されるわけではないが、関連する文法や語法の諸特性によりいわば協調的に支えられている可能性について検証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
英語における創造的逸脱表現を、文法と意味解釈のインターフェイスにおける相互作用の帰結として特徴づけるという方向性のもと、非選択目的語を伴う結果構文と活動動詞に後続する形容詞の副詞的解釈という2つの事例について、その認可のしくみの一端を明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
活動動詞に後続する形容詞の副詞的用法については、まだ事例研究が限定的であり、動詞think以外の類例のデータの検証や、形容詞と副詞の区別についてのさらなる理論的考察が必要である。また、動詞thinkの特異性の関与についての検証も進める予定である。さらに、創造的逸脱表現という観点から、具体的データの収集分析と並行して、文法と意味解釈のインターフェイスについての理論的一般化を図る。
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Research Products
(3 results)