2012 Fiscal Year Research-status Report
動詞と文法構文の習得に関する構文文法的・認知言語学的研究
Project/Area Number |
24520541
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
谷口 一美 京都大学, 人間・環境学研究科(研究院), 准教授 (80293992)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
深田 智 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 准教授 (70340891)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 言語習得 / 自他交替 / 中間構文 / セッティング主語構文 / 移動動詞 |
Research Abstract |
2012年度は、研究代表者(谷口)および研究分担者(深田)が各々担当する言語習得現象に関し、こどもの発話データベースであるCHILDESを用い、データ収集と観察にあたった。 谷口は、英語における他動詞と同形の非対格自動詞用法の習得を担当し、自他交替および中間構文に関する調査を前研究課題から継続して行った。こどもが他動詞から非対格自動詞用法をどのようにして習得するかの調査の中で、言語習得期のこどもへの大人の発話に特徴的な迂言的構文 (make X move の形式)の存在が明らかとなり、同形式が open など他の非対格自動詞でも利用されていることが、本年度の調査から確かめられた。この研究結果については、学会および研究会での招待講演として発表を行った。同時に、英語における中間態 (middle voice)の位置づけを他言語との比較から考察し、非対格自動詞用法以外に英語の中間態的事態把握を記号化する構文の検証を行った。 深田は、担当である移動表現の習得全般に関する先行研究を調査すると共に、CHILDESを用いた調査の準備と導入にあたり、英語の移動動詞およびセッティング主語構文に関するデータ収集を行った。その結果を考察し、今後の調査において選定すべき語彙や構文について、検討を行った。また、コーパスによる調査に並行し、こどものための絵本 “The Tale of Peter Rabbit” 及び日本語版「ピーターラビットのおはなし」における移動表現を抽出し、それらに見られる特性の分析を行った。 以上、谷口・深田共に、CHILDESによるコーパス調査を進行すると同時に、担当の言語現象の習得に関わる要因について基礎研究を行い、次年度以降の研究基盤の構築にあたった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題採択後に、研究代表者(谷口)の所属機関の異動が決定し、研究資料の図書や機器の多くを前所属機関に返納せざるを得ず、研究環境を新たに整備する必要があったことに加え、研究分担者(深田)の出産・育児による研究活動の一次中断が、研究計画にやや遅れを生じている理由である。ただし出産・育児による休業は短期間であったため、本研究費の留保申請は行っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の通り、本年度は研究計画に遅れが生じ、研究費の使用も予定を下回ったが、谷口は所属機関での研究環境が整いつつあり、深田は育児休業からすでに復職している。次年度は、今年度完了しなかった調査を継続し、コーパスによるデータ調査補助を依頼する大学院生の人数を2名程度増加させるなどし迅速化を図ると共に、当初の研究計画どおり、谷口・深田の調査結果を統合させ、言語習得モデルの構築にあたる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
深田は出産・育児のため研究中断期間が発生したことにより、次年度に使用を繰越する研究費が多額分生じたが、その研究費については深田が次年度配分と合わせて利用することとする。特に深田は、2013年国際認知言語学会で発表のための海外出張旅費、育児期間中につきデータ収集・整理の補助アルバイト増加のための謝金としての使用を重点的に行う。 谷口は概ね計画に沿った使用状況であり、次年度以降の計画に大きな変更なく、国内外の学会での研究成果発表のための旅費およびデータ収集・整理の補助アルバイトの謝金として主に使用する予定である。
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