2012 Fiscal Year Research-status Report
ハイブリッドモデルによる英語学習者のプロソディの知覚に関する研究
Project/Area Number |
24520542
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
立石 志乃扶(水口志乃扶) 神戸大学, その他の研究科, 教授 (00157489)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
PINTER Gabor 神戸大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (30580691)
大和 知史 神戸大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (80370005)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 英語 / プロソディ / 知覚 / プロミネンス / チャンキング / 国際情報交換(アメリカ合衆国) |
Research Abstract |
本研究の目的は、日本語を母語とする英語学習者が、英語プロソディの音韻的特質を知覚出来るか否かを、ハイブリッドモデル(Cole et al. 2008参照)に基づいて検証することにある。本年度は、Cole et al. 2008と同じ音源を使い、日本語を母語とする英語学習者を被験者として、プロソディの知覚を調査する計画であった。 H24年度は、この研究計画に基づき、Cole et al. 2008と同じ音源を入手し、それを日本語の英語学習者の知覚実験ができるようにまず加工した。Cole et al. 2008の音源はアメリカのオハイオ大学が提供しているのBucheye corpusというアメリカ人の日常会話を録音したコーパスであるので、学習者には難しすぎるからである。母語話者の知覚データと比較する必要上、加工には工夫が必要であったが、ほぼ半分の長さにして、被験者の心的ならびに物理的な負担が過度にならないように注意をした。 その上で、日本語の英語学習者である100名の被験者を使って知覚実験を実施した。実験はプロミネンスとチャンキング知覚の二種類で、得られたデータは統計処理をして分析をした。 結果は、母語話者と日本語を母語とする英語学習者では、プロミネンスとチャンキングの両方で大きく異なる、というものであった。チャンキング(どこで発話のまとまりを感じるか)では統語情報が大きく影響すると言われているが、母語話者がS(文)単位で英語発話のかたまりを知覚しているのに対し、日本語を母語とする英語学習者は、NP(名詞句)やVP(動詞句)という小さなかたまりで知覚をしている、という統計的に優位な結果がでた。またチャンキング(どこが目立って聞こえるか)に関しては、日本語を母語とする学習者は被験者間でばらつきが大きく、母語話者間でばらつきが小さいのとは大変対照的である、という結論を得た。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の初年度の計画としては、プロソディの聴覚実験をする環境の整備をする予定であった。しかし実際には、書年度から知覚実験のための環境整備だけではなく、実際に実験を大規模にできたことは計画以上である。また実験結果を分析できたばかりではなく、初年度にもかかわらず研究成果を国際会議に応募し、受理され、ポスター発表ができたことは喜びである。さらに実験音源を提供していただきたイリノイ大学のコール教授をアメリカ合衆国まで訪ね、実験結果、分析を発表する機会を得、またデータに関して、また今後の実験計画について建設的な打ち合わせができ、H25年度の研究方針が発展的に決定できた。 以上の理由から、当初の計画以上に本研究が進展していると言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
H24年度の実験を踏まえて、さらに発展的実験を行う。 具体的には、実験群をH24年度以上に細かく設定し、大規模知覚実験を行う。H24年度では英語の能力別の観点から実験群を作ることができなかったので、H25年度は日本語を母語とする英語学習者を英語の能力別に分けて実験群を設定する。 知覚実験素材については、H25年度は母語話者の知覚実験を加工することなく全く同じデータを使える環境を整え、パラレルな比較が可能になるように腐心し、H24年度よりも、厳密な実験をめざす。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H24年度は、大規模に実験を行ったにもかかわらず、データ処理に予定していたほど予算がかからなかったので、H25年度に繰り越しをした。 H25年度は実験の規模がH24年度よりも大きくなる予定であるので、当然データ処理にも時間も予算も必要であり、繰り越し分を補填して、きちんとしたデータ処理ができる環境を整えたい。 国際情報交流も続け、研究成果も国内外の学会で発表したいと思っている。
|
Research Products
(3 results)