2012 Fiscal Year Research-status Report
日英語対照による語形成のメカニズムと音韻構造に関する研究
Project/Area Number |
24520545
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
太田 聡 山口大学, 人文学部, 教授 (40194162)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 複合語 / 連濁 / アクセント / 略語 |
Research Abstract |
平成24年度は、主に日本語の複合語のアクセントパターンとその関連問題に取り組んだ。 まず、日本語の複合語の例として人名を取り上げ、そこに見られる連濁とアクセントの相互関係を詳細に検討した。人名のアクセントについて論じた従来の研究では、「~田」という例が主に取り上げられたが、本研究では、「~川」など様々な例を取り上げた。そして、例えば「谷川」を「たにかわ」と読む場合と「たにがわ」と読む場合のように、アクセント(核)がある例では連濁が回避され、連濁する例ではアクセントがなくなる(平板型になる)強い傾向があることを示した。また、なぜアクセントと連濁は共起しにくいのかを音声学的観点からも考察した。 次に、外来語複合語および外来語単純語それぞれの短縮形(略語)が作られる仕組みについて考察した。従来の研究では、フット(foot)やアクセントや音節構造の観点から短縮形に関する制約を論じることが一般的であった。これに対して、本研究では、アクセントの有無や音節構造などの観点からだけでは説明できない略語形式には、「同音から成る競争相手がなくなるまで長くする」という原則が働くことを論じた。具体的には、「テレビジョン」が「テレビ」と略されるのは、「テレ」だけでは「テレパシー」などの他の例と混同するので、「テレビ」と3モーラの長さにせざるを得ないから、などである。さらに、この競争相手が無くなるまでのばすという原則であれば、英語の省略語の可否の説明にも適用できることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
和語や外来語の複合語に関する分析は十分にできたが、漢語複合語で無アクセントになる例の分析、および英語の複合語アクセントの考察が当初の予定ほどにはできなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、複合語のアクセントおよび連濁に関する研究を、無意味語を用いたテストを新たに実施しながら、引き続き行う。そして、略語の仕組みに関する研究も論文にまとめる。また同時に、日英語のデータに基づいて、複合語の短縮形と混成語の異同などについても考察したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
国内の研究会・学会に出席して、自身の研究成果の発表も行う。このための国内旅費として15万円を組み入れる。 また、アメリカ言語学会が夏期に開催している言語学講座(Linguistic Institute)に参加して、形態音韻論やレキシコン研究の世界的な動向と最新成果を学ぶことは、本研究を推進する上で大いに役立つ。そのための参加費として50万円を計上する。 さらに、書籍購入費目の20万円、および論文校閲費用の5万円も確保する。
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