2012 Fiscal Year Research-status Report
語基の音節構造と強勢パターンの分布:記述と理論的予測
Project/Area Number |
24520549
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kobe City University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
三間 英樹 神戸市外国語大学, 外国語学部, 准教授 (20316029)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 英語 / 音韻論 / 強勢 / 接尾辞 / 最適性理論 / 類型順序 / 計量調査 |
Research Abstract |
本研究は、筆者が前年度まで行なっていた研究「英語接尾辞のクラス性と強勢付与に関する記述調査と部分配列理論による分析(課題番号:21520513)」(以下「前研究」)にその基盤を置く。この前研究は、英語の接尾辞ごとの語形成のパターンと強勢付与のパターンの分布が、実際にどのようなものであるかを記述することを目的の一つとしていた。本年度はこの前研究の成果を博士論文としてまとめあげ、筑波大学に提出し、受理された。またその研究成果について、および前研究と同じアプローチに基づく日本語における発展的な応用研究の可能性について、いくつかの学会・研究会で口頭発表を行った。 また、この前研究で得られた調査結果をデータベース化する作業の最終調整も当該年度に行った。前研究は長期間に及ぶ記述調査に基づいたものであったため、データのまとめ方が一貫しておらず、本研究で適切に活用するためには一貫した形に修正する必要があった。この、膨大な個々のデータを一つ一つチェックして必要なものに修正を行う作業が、この1年でほぼ終了した。 最後に、前研究で明らかになった英語の強勢に関する制約群を用いて、T-Order Generator によってコンピュータ上で類型順序の計算を行った。その結果、論理的に可能な入力形と出力形のペアの中には、754個の含意関係があることがわかった。この含意関係はあるパターンが別のパターンより生じる確率が高いことを予測するものであるが、今後はその予測が正しいかどうかの検証を、上記のデータベースに基づいて行うことになる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概ね予定通りに進行している。24年度の計画は (1) T-Order Generator による英語強勢に関する類型順序のシミュレーションと、(2) 英語強勢の包括的なデータベースの作成作業であったが、ともにある程度まとまった作業を完了させることができた。また理論研究のための前提となる分析について、博士論文という形でまとめることができた。欲を言えば、(1)に関しては有意味な類型順序の選定、(2)に関してはデータベースのさらなる拡充を行いたいところであったが、そこまでは至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的は、語形成および音韻産出の入力形の分布(すなわち語基の形の分布)と、その出力形の分布(すなわち語形成および音韻産出の結果の分布)の関係を、理論的に考察することにある。上記の前研究が論文としてまとまり、データベースの形も整ったことで、この出力形にあたる部分の観察が終了したことになる。今後はこのデータベースに個々の語の入力形の情報を追加していき、入力形の分布を考察していくことになる。 また今回得られた754個の類型順序の中から言語学的に有意味なものを選定していき、どのような含意関係が強勢パターンの間に予測できるかを考察する。シミュレーションは論理的に可能なものを機械的に算出するだけであるので、その中から真に有意味なものを選定する必要があるからである。最終的にはその予測と、データベースから得られる実際の分布がどの程度一致するか、検証することになる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
引き続きデータベース作成のための入力を行うため、アルバイトの人件費を使用する。 本年度得られた類型順序に関して議論を行うため、類型順序論の創始者である Arto Anttila (Stanford大) を日本に招いて意見交換を行う予定である。また、国内外の学会で研究成果を発表する予定である。これらのための旅費を使用する。 関連する研究書や、必要に応じてコンピュータ周辺機器を購入する。
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