2014 Fiscal Year Annual Research Report
統語的主語の義務化:英語史における非人称構文の衰退と非対格構文の出現
Project/Area Number |
24520556
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
大澤 ふよう 法政大学, 文学部, 教授 (10194127)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 統語的主語 / 非人称構文 / 語彙・意味優位型 / 機能範疇 |
Outline of Annual Research Achievements |
古英語においては主語が義務的ではなかったということを、証明するためには現代英語との対比で主語が欠落している構文を取り上げるだけでは足りない。「~が存在する」という証明は1個の例でも発見することで証明がされる。しかし、「~がない」という証明は存在を表している例がまだ発見されていないだけであるという批判が常にあるからである。 その点を考慮して、本研究は主語が義務的に存在するならば、必ずそれに伴って起こるであろう統語現象を取り上げ、それが欠如していることが英語史研究者の間では広く認められている場合には有効な証拠となるということから論を進めた。主語が欠如しているということは、主語を必要とする機能範疇の不在であるという仮説の証明のため様々な統語現象を論じた。主語が欠如しているという問題は、節構造がどのような原理のもとに構成されているのか、という根本的な問題に立ち入らない限りは議論はできないとの観点からそもそも古英語において統語構造はいかに構成されるのかという点から論じたシンポジウムを近代英語協会の依頼により、企画し構成し、かなりの評価を得た。 また、節構造だけでなく、句構造の構成についても古英語においては同じように機能範疇が不在だったことを論じ、古英語が語彙的範疇のみから構成される「語彙・意味優位型」言語であることを論じた研究をスイスの学会で発表した。 主語が入るべき「外項」が投射されない構文として古英語時代には主格を持った名詞が存在しない、いわゆる非人称受動態構文が存在したことを取り上げ、これが主語の義務性の否定になることを論じた研究をイタリアの学会で発表した。またこの研究は「他動詞性」とは何かという大きな問題への解決の糸口となり、ひいては「対格性」とは何か、「非対格性」とは何かいう問題への糸口となることをかなり詳しく例証することができた。
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