2012 Fiscal Year Research-status Report
前置詞句を含む表現の歴史的発達に関する構文文法的研究
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24520557
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | 南山大学短期大学部 |
Principal Investigator |
石崎 保明 南山大学短期大学部, 英語科, 准教授 (30367859)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 構文文法 / 用法基盤モデル / 前置詞 / way構文 |
Research Abstract |
本研究課題の目的は、前置詞句をその構成要素に含む文法構文の歴史的発達過程の実態について、その社会的、文化的、および文献学的な背景なども考慮しながら調査し、それらの歴史的発達過程を、認知言語学において広く採用されているものの言語の通時的発達の説明理論として応用されることの少なかった構文文法理論(Construction Grammar)の観点から説明を試みることによって、歴史言語学における言語変化を扱う諸理論に対する実証的かつ理論的な貢献を図ることである。 本研究は、現代英語における前置詞句を含む文法構文の歴史的発達に対する実証研究と、構文文法理論に基づく理論的研究に大別され、今年度は句動詞構文とway構文に焦点を絞って考察を行った。実証的研究としては、上記表現の歴史的発達過程をいくつかの電子コ-パスやOxford English Dictionary(OED)を用いて調査した。理論的研究においては、構文文法理論を歴史研究に応用する際の問題点を踏まえながら、用法基盤モデルに基づく新たなモデルを提示した。今年度行った実証的・理論的研究の内容は、南山学会文学・語学系列研究集会では歴史言語学を必ずしも専門としない研究者に対して、日本英文学会中部支部第64回大会では英語学の研究者に対して、それぞれ口頭発表した。 また、句動詞set outの歴史的発達とその構文文法理論的な位置付けについての論考が、中野弘三・田中智之編『言語変化』(開拓社)の中に掲載されることが確定しているほか、way構文の発達を構文文法の観点から考察した論文が2013年8月に開催される国際会議(5th International Conference on Late Modern English、於University of Bergamo, Italy)に採択され、口頭発表することになっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定として、全研究期間の前半は(i)古英語期以降の前置詞句の発達を認知言語学の観点から考察を深めつつ、(ii)way構文や(iii)動能構文といった、一般にCGで典型的な文法構文と考えられているものに対して考察を試みる、という3点を考えていた。平成24年度は(i)を重点的に行いながら、(ii)について調査を進め、その研究成果を学会において口頭発表することを考えており、構文文法理論の歴史的研究を行う上での課題を整理し、合わせてway構文の特に初期の発達について文献調査を進め、2件の研究発表に結び付けることができたという点では、順調に進展しているということができる。 一方、古英語期の格標示に対する認知言語学的または構文文法的位置付けについては、今年度の研究の焦点を句動詞とway構文に定めたということもあり、大きな成果は得られていない。よって、現時点では、本研究はおおむね順調に進展しているということができる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度の前半はway構文の歴史的発達について国際学会での口頭発表を予定しており、そのための資料調査等を中心に行い、後半はその発表内容を論文に結び付けるための準備を行うとともに、古英語の格標示に関する認知言語学的特徴付けを行う予定である。後者の研究は、動能構文の発達を考える上でも重要な役割を果たすものであると考えられるため、動能構文の資料収集にも取りかかる予定である。本研究課題としての最終年度となる平成26年度は、動能構文の調査を継続しつつ、そこでの結果を踏まえながら、CGに基づく言語変化モデルを構築し、その内容を学会発表や論文の形で発表していきたいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究では、適切な言語資料の解釈に基づいた用例の収集を行うため、デ-タベ-スの利用が不可欠となる。CD-ROM版やオンラインのデ-タベ-スのいくつかについては、現在の研究環境の中で利用可能であるが、日本国内では利用しにくいものもあるため、海外の図書館等で調査を行う必要がある。次年度は8月に国際学会での研究発表を予定しているため、そのための調査を含めた旅費を確保する必要がある。また、本研究は構文文法理論と歴史研究を融合させることを目標としているため、最新の認知言語学理論や構文文法研究の動向を把握するための研究書も整備しておく必要がある。 さらに、現在、北欧諸国を中心に本研究に関連する研究が進められていることも考慮し、本研究の成果は可能な限り英文での公表を考えているため、専門的な知識を有する英語母国語話者に英語論文を校閲(プルーフリーディング)してもらうための費用を確保しておきたい。 24年度は当初予定していた校閲のための支出がなく、また海外出張のための予算が予定よりも低く収まったことにより残額が生じたが、25年度はその残額をそれぞれの支出項目で使用することを考えている。
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