2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24520559
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Research Institution | Otemon Gakuin University |
Principal Investigator |
稲木 昭子 追手門学院大学, 国際教養学部, 名誉教授 (50151577)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
沖田 知子 大阪大学, 言語文化研究科(研究院), 教授 (50127205)
堀田 知子 龍谷大学, 社会学部, 教授 (90209255)
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Keywords | 情報操作のデザイン / トリックのレトリック / 新しい文体論の質的・量的研究 / 口語資料 / 誘導・誤誘導 |
Research Abstract |
本申請研究「情報操作のデザイン:理論と実証」は、英語における情報操作に焦点を当て、そこに隠されたトリックのレトリック(誤誘導、誘導、織込みなど)を解明することにより、ことばの仕組みと働きの考究を行うものである。平成24年度は、書きことばの代表として推理小説における情報操作の言語学的分析およびスモールコーパス作成と分析を行ったが、平成25年度は<演説における情報操作の言語学的分析・スモールコーパス作成と分析>を推進した。演説は多くの場合、あらかじめ用意あるいは構想されており、それだけにその効果をあげるために言語情報のデザインは強く意識されたものとなる。 代表者稲木は、2009年のアメリカ大統領就任演説の一回目、4年後の二回目、これに先だつ民主党大会の大統領指名受諾演説、および共和党の対立候補者の意図性の高い演説をコーパス化し、量的分析による実証的な裏付けを行いながら、情報操作のメカニズムの一端を、代名詞による切り替えと指示対象の拡大という観点から分析した。分担者堀田は、会話体形式のジョークの構造や落ちの仕組み、あるいはそこで使われている情報操作の手法を考察した。相手を誤誘導して驚かせることによって笑いを生み出すことを目的とするが、その技法は、推理小説などのフィクションの語りとも共通するものである。分担者沖田は、説得の談話について、戯曲を題材に、メタ言語を含むメタ談話を手がかりに、作者ないし話者がどのように情報をデザインして提示し、評価や態度を入れ込み、そして情報の流れを管理ときには操作するのかということをみた。 言語材料を、演説を中心とする口語資料まで拡げ、情報操作のメカニズムを意味論的・語用論的点から分析を深化させた点は、より精密な言語的文体論研究の成果として発表できたと考える。さらに特徴的な比喩表現の役割についてはとりわけジョーク(堀田論文)を題材に分析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本申請研究は、ことばによる情報操作に焦点を当て、隠されたトリックのレトリックを解明することにより、その仕組みと働きの追究を行うものである。当初計画していたように対象データのケーススタディを重ねることにより新たな融合研究の可能性を探究するものである。 平成24年度は書きことばの代表として推理小説における情報操作の言語学的分析およびスモールコーパス作成と分析を行い、平成25年度はさらに言語材料を拡大し、演説等の話しことばの言語学的分析を、さらにその実証としてスモールコーパスを作成して遂行した。研究代表者と分担研究者が討議を重ね、今年度もケーススタディの成果として多様な観点からの3つの論文を公表できたことは、本課題が目指している英語の情報操作に関するデザインを通した新たな文体論研究として、概ね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度の、書きことばの代表としての推理小説における情報操作の言語学的分析・スモールコーパス作成と分析、平成25年度の、話しことばの代表としての演説における情報操作の言語学的分析・スモールコーパス作成と分析、のケーススタディを受けて、平成26年度は、<メディア報道における情報操作の言語学的分析・スモールコーパス作成と分析>へと、分析対象を拡げていく。 メディア報道は、新聞や雑誌の書きことば、テレビやラジオの話しことば、さらには新しいマスメディアのWEB上のことばなど、さまざまな形態が取られているが、イデオロギーなどの織込みに注意を払う必要がある。誘導という明確な意図はなくても、どのような立場から事象を捉えるか、という構図の取り方や、使用することばや表現に、話者の主張や偏った情報が織込まれたトリックのレトリックは日常的によくみられる。従来の質的分析に、批判的談話分析手法などもとりいれて、学際的な観点から質的分析を推進する。 なお、平成26年度は、PALA 2014(Poetics and Linguistics Association, The University of Maribor, Slovenia)で研究の成果の一端を発表する。 さらに本申請研究の集大成として「情報操作のデザイン:理論と実証」をまとめて、その成果をWEB上で公開する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
注文書籍の納入が遅れたために年度内で購入できなかった。 物品費に加算して、当該図書の購入にあてる。その他の項目に関しては計画通りとする。
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Research Products
(4 results)