2012 Fiscal Year Research-status Report
ろう児の書記日本語教育におけるマルチリテラシーズ概念の有用性
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24520585
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | J. F. Oberlin University |
Principal Investigator |
佐々木 倫子 桜美林大学, 言語学系, 教授 (80178665)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ろう児 / 書記日本語教育 / マルチリテラシーズ / アメリカ合衆国 / 大韓民国 |
Research Abstract |
(1)日本におけるろう教育分野の実態を調査するという点では、私立明晴学園(本研究の研究協力校でもある)、神奈川県立平塚ろう学校、北海道立札幌聾学校の3校について、授業見学、担当教員からの情報収集・意見交換、保護者との懇談などをおこなった。 (2) 先行研究の文献的探索・整理については、バイリンガル教育分野に関して、これまでの蓄積を整理し、さらに、ある程度進めた。 (3)ろう児の携帯端末の利用による、書記日本語の基礎的リテラシー、および、情報リテラシーの育成に関する調査結果については、かなり力を入れて進めた。特に、研究協力校における小学校高学年生の夏休み中の携帯メールを利用した、書記日本語能力および情報リテラシーの育成について、担当教員との協働研究を進めた。夏休み中の進行部分については、記述、分析をおこない、、香港中文大学での「アジアにおける手話言語学およびろう教育の国際研究大会2013」において、2013年2月1日にポスター発表をおこない、また、論文をまとめて、2013年3月刊行のジャーナルにおいて発表した。 (4)ろう児の手話能力の育成のためのリソースの一環として、また、将来的に手話能力評価の一環として役立つことを願い、DVDブックを作成し刊行した(2013年2月ココ出版)。内容的には『ろう者から見た「多文化共生」』書籍版に続くもので、書籍版の著者、座談会出席者の中からろう者4人に関わってもらったものである。ふたつのDVDブックの内容は、ブック1が、木村晴美(国立リハビリテーションセンター学院・手話通訳学科教官。NHK手話ニュース845キャスー)、森壮也(日本貿易振興機構アジア経済研究所主任研究員)両氏による講演からなり、DVDブック2は久松三二(全日本ろうあ連盟事務局長)、田門浩(弁護士、国立大学法人筑波技術大学非常勤講師)両氏による講演からなる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画以上に進展している分野としては、ろう児の教育における携帯端末の利用分野、および、ろう者の社会的背景に関する文献探索、および、DVDブックによるろう者・児に対する啓蒙活動があげられる。 特に、携帯メールを利用した多様なリテラシーの育成状況に関する調査研究については、担当教員との協働研究が順調に進んだため、学会発表、論文ともにある程度満足に行く成果をあげることが出来た。 しかし、マルチモーダル分野、マルチリテラシーズ分野に関する理論的研究については文献的探索・整理を含めて初年度は遅れがちになっている。調査研究に時間とエネルギーをとられ、また、ろう学校調査についても、アンケート調査よりも実態を細かく自身の目で確かめる訪問調査を優先することを決めたため、国内3校、ブラジル3校に留まった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度はマルチリテラシーズ研究を重視し、文献的探索・整理とともに、学校調査、研究協力校との実践研究、学会発表をおこない、得たフィードバックも含めて、出版準備をおこなう。本研究においては、ろう児本人、ろう児の保護者、そして、教育者を巻き込んで、啓蒙活動的要素も含めた研究を推進したいと願っている。 マルチリテラシーズ理論を背景に新たなリテラシー観を大きく取り入れたカリキュラム開発を考え、教育現場との連携をはかっていく。研究協力校は言うまでもなく、それ以外の聾学校にも参加を呼びかけ、新たなカリキュラムの試行を勧めたい。 平成25年6月の日本言語政策学会、8月の母語・継承語・バイリンガル教育研究会、その他海外の学会も含めて、研究発表の形での報告、同分野の研究者・教育者からフィードバック、米国ギャローデット大学での訪問調査・研究者との情報交換などを積み重ね、出版準備を進めたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
まず、平成24年度より繰り越した金額(111,142円)については、研究発表の手話通訳費等にあてる。 今年度の130万円については以下のとおり支出することを計画している。 【設備・備品費】調査等に携行のための、タブレットPC等。携帯可能なデータ処理用・研究発表・情報交換用タブレット。【消耗品】パソコン用・文房具【旅費】学会発表・聾学校視察・研究者との情報交換のためで、[国内旅費]は札幌、京都、平塚 各聾学校,[国外旅費]アメリカ合衆国・ワシントンD.C.(ギャローデット大学滞在)および韓国・ソウル(ろう者教会、および、ろう学校訪問)【人件費・謝金】研究補助(データベース入力、整理),手話通訳謝金,専門的知識の提供【その他(出版準備費)】編集会議費、通信運搬費等の雑費。
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Research Products
(5 results)